運比べ
投稿者:ぴ (414)
長編
2023/02/25
16:15
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私の身代わりにあの男の子は亡くなったと最初は思いました。
でも実際は違ったのです。
あの日あの交通事故で亡くなったのは、当事者であるトラックの運転手ただ一人だけです。
私が何度も一緒にいた男の子のことを主張しても、周りの大人は私を可哀そうな目で見るだけ。
なぜならそんな男の子なんて存在していないからです。
医師からは何度も事故のショックで、記憶がごちゃごちゃになっていると説明されました。
あの日私は学校で知り合った下級生と一緒に帰っていたはずなのに、目撃者の情報によると横断歩道を渡っていたのは私一人だったというのです。
さらに追い打ちをかけるように、同級生は私が仲良くしていた下級生の男の子なんて見たことがないと証言したらしいです。
つまり私は、存在しない子と遊んでいたということになります。
交通事故を目の前で見たショックによる記憶の混乱が起こっているのだろうと診断されました。
家族にもかなり心配をかけ、しばらく病院に通いました。
みんな私が交通事故を目の前で見たショックでおかしくなったと言いますが、それだけでこんなにおかしくなるでしょうか。
運比べで私はあの男の子に最後の最後で勝利しました。
でもあの男の子がいなかったら、私はあの時間あの道を歩いていなかったと思います。
もしかしたら私は知らず知らずの内に、交通事故現場に誘われたのかもしれません。
「運比べ…」あれはただの遊びではなかったかもしれないです。
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