運比べ
投稿者:ぴ (414)
絶対当たらないだろうと笑ってしまいました。
だって車ってだいたいが白黒で、黄色だなんて奇抜な色はあまり見たことがなかったからです。
実際にその後1~9台目までの車は黒っぽい色が多くて、これは勝ったなと思いました。
けれど10台目の車が近づいてきて、驚いたのです。
だってその車が黄色っぽく見えたからです。
近くまで来たら案の定、車の色は黄色で私はびっくりして、何度も見返してしまいました。
その後も何個かこの運比べに付き合ったのですが、ことごとく運は男の子のほうに味方しました。
あまりに運がいいので、何か仕掛けられているのではと疑うくらいの運の良さでした。
私は負けっぱなしで悔しくなって、運比べに本気になっている自分に気づきました。
男の子は悪戯っぽい笑みを浮かべて、楽しそうにしていました。
こうして道中にあった横断歩道を渡っていたときでした。
「ねえ、運比べしよう。この分かれ道を右に行くか左に行くかどっちがいい?」とその子に聞かれたのです。
てっきり私はどちらかの道の先に彼の家があると思い込んでいました。
だから何も考えず「右」って答えたのです。
そしたら「本当にそっちでいいの?」と彼が聞くのです。
さきほどから運比べで連敗だった私は「左がいいの?」と聞いてみたのです。
「僕ならどうかな?」と彼は無邪気な笑顔であやふやに答えました。
私は少し考えて、「じゃあ左にする」て直前で変えたのです。
男の子は何とも言い難い、困ったような曖昧な顔をしました。
それが印象に残っています。
横断歩道を渡ってすぐに、私は左に曲がりました。
てくてく歩いていくと、後ろから足音が聞こえないことに気づきました。
後ろを振り向いたら男の子は右の道を進んでいたのです。
何してるのと私が声をかける間もありませんでした。
それは本当に一瞬の出来事で、男の子がいたその道にトラックが突っ込んだのです。
驚愕する私の目の前で、交通事故は起こりました。
びっくりしすぎてそのあとの記憶がほとんどありません。
私の目の前で、その男の子は確かに車で轢かれたのでした。
もし、あのとき私があのまま右の道を進んでいたら、トラックに突っ込まれていたのは私だったと思います。
ストレートに右を進んでいたら、私は死んでいました。
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