記憶をつくる女

妻は怒りながらよくこう言う。
「あなた、あの時〇〇って言ったわよね！」
そんなことは言ってないのだが、覚えていないだけで言ったのかも知れない。
なので、若干罪の意識もある。

食べ物もそうだ。
初めて食べたのに、「もう忘れたの？前にも作ってあげたでしょ。」「買ってきてあげたでしょ。」「おいしいって言いながら食べてたじゃない。」と怒り出す。
これも、まぁそうだったかも知れないな、とちょっと思う。

次はこうだ。
「あなたは、結婚して何年間かは、お金が無いと言いながらほとんど毎日飲みに行っていた。飲みに行くとか言って他の女のとこへ行ってたんだものね。」
まぁ、会社以外にも色々と付き合いがあって確かに飲みには行っていたが、ほとんど毎日ということはない。しかも女ってのは誰のことだ？

ちょっと大げさに言いすぎ、妄想入ってる、と思って聞いている。

さらにはドライブに出かけると、
「前にこっち方面に来た時もこの神社に寄ったよね。ここからの景色覚えてるし。あの時は釣りもしたよね。」
？
おいおい待て待て、その内の一個も記憶にないぞ。
〇〇と言ったか言わなかったか、というレベルの話じゃない。
「ここは初めてだけど。」と言うと、烈火のごとく怒りだす。「もう忘れたの！？」と。
おまけに「前の彼女とも来たって言ってたわよね。」
前の彼女とも来たことがない。来たことがあったとしても、それはしょうがなくない？
妻の勢いには、もしかして自分が若年性の認知症か何かか？と押されている自分がいる。

こうなってくると妻の脳やメンタルにも疑いを持たざるを得ない。
それを強く思ったのがこれだ。
「今夜の映画は地上波初登場なんだって。」
妻は平然と言う。
「いや、そんなことはないわ。去年か一昨年位にテレビで見たもの。」
？
テレビ局が視聴率稼ぎのためにウソついてんの？

はては、「これ新発売のお菓子。おいしそうだから買ってきたよ。」
と差し出すと、
当然のように「ああこれね、前に〇〇で売ってたやつね。けっこうおいしいよね。」
？
メーカーもウソついてんの？