思い出したくもない記憶
投稿者:まろ (12)
「タヒねぇぇぇ!!タヒねぇぇぇぇぇ!!!タヒねぇぇぇぇ!!」
俺の頭に轟いたのはその声のみ。鼓膜が破れそうなほどの甲高い声であったのを覚えている。従弟も俺の反応に驚いたのか悲鳴を上げながら俺に追いつこうと走ってくる。従弟と俺は同時にトンネルを抜けた。恐る恐る従弟の方を向いたら、そいつの姿は消えていた。俺は安心しながら
「すまん…お前を驚かそうと思って…声を上げた…」
と従弟に謝った。従弟は、真に受けたようで
「もう帰りたい!帰ってスマブラしよ!」
と同意したため、元来た道を自転車で帰り、雑談をしながら無事に家まで辿り着いた。飯を済ませて従弟の部屋でスマブラをしたが、従弟とのスマブラは全く集中できなかった。トンネルのやつのことが鼠取りの如く頭から離れないのだ。挙げ句の果てに俺は強い吐き気を感じ、1階のトイレへと駆け込んだ。トイレのドアを開けると
便器に奴が座っていた。
あの時と同じ顔をしたまま。叫びたくても叫べない。俺の身体は自然と硬直した。奴は俺の顔を見てニヤリと笑った。その瞬間、「ドスン」と大きな音が家の外から響いた。そして外から女性の悲鳴が聞こえた。それに我に帰り玄関のドアをこじ開け何があったか見に行った。
門の前には、従弟が倒れていた。頭から血を流した状態で。俺は状況を理解できなかった。家の方を見ると、2階の窓が開いていた。従弟は飛び降りたのだ。親と従弟の親が出て来て、パニック状態になった。従弟の母親の泣き叫ぶ声は今でも覚えている。
急いで救急車を呼び、従弟は病院に搬送された。従弟が家に帰って来た時、従弟のそばには奴が立っていた。今でも覚えている。奴は、笑みを浮かべていた。表情ひとつ変えることなく。奴は、従弟に取り憑いていたのだ。
奴と同じ末路を従弟は、味わったのだ。
俺もすぐそっちへ行くから。また、スマブラしような。待ってろよ。
落ち着いて。
取り敢えず除霊してもらって下さい。
後日談なのですが、友達は除霊してもらったそうですよ!
除霊しても駄目だった事ですか。