深夜の玄関にて
投稿者:take (96)
友人が大学生時代に体験した話です。
彼は地方から出てきていたので、
単身者用アパートにひとり暮らしでした。
間取りは玄関を入ってすぐキッチン、3点式ユニットバス、
そして6畳程度の洋室という典型的な1Kルームでした。
夜中に尿意を覚えてトイレに行き、ベッドに戻ろうとしたときです。
なぜか気になって玄関の方に目を向けました。
玄関のドアノブはレバー式なのですが、それが下がっているのです。
下がっているということは、誰かが向こうからレバーを押し下げているということになります。
一瞬ドキリとしたそうですが、築年数の古いアパートです。
何かの拍子に下がったまま戻らなくなっているのだろうと思い、元に戻そうとしました。
が、向こうから誰かが押さえつけているかのように、動かないのです。
もう一度力を入れて押し上げると、なんとか元に戻ったそうです。
変だな? と思い、ドアの覗き穴から見てみましたが誰もいません。
たまたまひっかかっていただけだろう、とその夜はそのまま眠りました。
数日後、深夜アニメを観て、寝る前にトイレに行きました。
そういえば、と、あの夜のことを思い出し、玄関を見て、ハッとしました。
またドアノブが下がっているのです。
あれから意識して、レバーをきちんと上げるようにしていて、
その日も、施錠する前にドアノブが上がっているのを確認していました。
友人はそっと足音を忍ばせて玄関前まで行き、覗き穴を覗いてみましたが、
やはり誰もいません。
レバーを握って、ぐいっと引き上げました。
一瞬抵抗があったものの、レバーは上がりました。
しかし手を離した瞬間、ガクン、とまたレバーが下がったのです。
やはり誰かが向こうからドアノブに悪戯している、と確信した友人は、
ドアノブを思いっきり引き上げると同時に鍵を開け、
「何やってんだオラ!」
と、ドアを勢いよく開けました。
玄関の外には誰もいませんでした。
薄暗い常夜灯に照らされている廊下には隠れるところなどありません。
怖い。