嫌な電話
投稿者:take (96)
「誰だおまえ?」
声に怒気を含ませて問いただすと、
「私だよ、私……もしもし」
と、同じく繰り返すのですが、か細い声の中に、なにか悪意のようなものが混じり、ざわっと耳に流れ込んできて、鼓膜を叩きます。
私は黙って通話を切りました。
私は3人きょうだいで、上と下に三歳違いの姉と妹がいます。
私と妹は『霊感体質』で、幼い頃から不思議なものを見たり感じたりしてきました。
その力は妹の方が強いのですが、高校生になってから、私の力は妹と同等か、それ以上になっていました。
通っている高校の同じクラブに一学年上の『霊感体質』の先輩がいて、その力は妹よりも数段上です。
『強い力を持つ人の側にいると、自分の力も研ぎ澄まされていく』といいますが、
当時の私は、先輩の影響で、まさにその力が強化されていたのでした。
件の先輩は『人ならざるものをやたらと引き寄せる』体質でもあり、
引き寄せられてきたモノは先輩には何もしないのですが、見える私に、ちょっかいをかけてくる奴がいる、らしいのです。
事実、学校で不思議な出来事に遭うことが多くなり、何度か悪さを仕掛けられたこともありました。
それでも万が一ということもあるので、姉に電話すると、講義中だったらしく留守電になりましたが、
一時間後に折り返しがきたので、電話をしたかと訊くと、「してないよ」とのことでした。
やっぱり……。
またタチの悪いのに目をつけられたのか。
私は苦々しい思いで携帯電話を睨みつけました。
「だからって家まで来るなよ、学校だけにしとけ」
携帯に毒づいてベッドに放り投げました。
その後、電話がかかってくることはありませんでした。
非通知拒否設定にしたので、それが効いたようです。
普通だったら、非通知拒否しても関係なく着信し続ける、というのがああいう連中の常套手段だと思っていたのですが、
あまり力の強い奴ではないのか、ただ諦めたのか知りませんが、ひと安心です。
それから数週間後の日曜日のことです。
両親と姉は朝から出かけていて、家には私と妹のふたりだけでした。
昼食は作るのが面倒だしということで、ピザの宅配を頼みました。
私はぼんやりとテレビを眺めながら、妹は携帯をいじりながら、届いたピザをダイニングで食べていた時です。
プルルル……と、家の固定電話が鳴ったのです。
「うわあ、ビックリした、家電が鳴ってるの久しぶりに聞いたワ」
そう言いながら、電話に近かった妹が受話器を取ろうとしました。
電話料金とかどうやって払っているのですかね?お化けは無職なのに。
オーレイ