「あれ、非通知だ」
と、いうのを聞いて、私は、
「待て、出るな!」
と、言って立ち上がりました。
「え? なんなの?」
ポカンとしている妹を押し退けるようにして電話の前にいきました。
確かに電話の液晶画面に『ヒツウチ』の文字が出ていました。
鳴り続ける電話をしばらく睨みつけて、受話器を取り上げました。
耳に当ててしばらく黙っていると、
『もしもし、私、私だよ……』
姉の声でそう言います。
(こいつ、家電にまでかけてきやがった……)
頭にカッと血が昇りました。
送話口を手で押さえて怪訝そうな妹を振り返り、
「ちょっと姉ちゃんに電話してくれないか、今どこにいるか」
「え、なんで?」
「いいから」
そう言うと、妹は何か察したのか、すぐに自分の携帯で姉に電話をかけました。
受話器の向こうでは相変わらず、
『もしもし、私、私だよ、もしもし、あのね……』
と、繰り返しています。
「あー、もしもーし、お姉ちゃん? ごめんごめん、ちょっと聞きたいんだけどさー……」
姉が出たらしく、妹が話しているのを聞きながら、受話器を握りしめました。
沸々と怒りが込み上げてきます。
妹が電話を切り、目顔で頷きました。
それに頷き返すと、一度深呼吸して、
「おまえの手口はもうわかってるんだよ、うぜえから二度とかけてくんな」
と、押し殺した声で言ってやると、向こうはしばらく沈黙し、チッ、と舌打ちをして通話が切れました。
私が受話器を置くと、
「いったい何事よ?」
妹が訊いてきました。
電話料金とかどうやって払っているのですかね?お化けは無職なのに。
オーレイ