四人目のお客様
投稿者:神助 (16)
古くから鏡はこの世と異世界を繋ぐと言われていると聞いた事がある。
私が以前働いていた職場はアパレル関係でした。
殆どの洋服屋さんには必ずと言っていいほど姿見が置いてあると思う。
私の職場にも姿見がいくつもありました。
しかもお客様が見やすいようにと、常に合わせ鏡になっていた。
そのせいか度々不思議な出来事が頻繁に起きていました。
「オーダーが決まったのでお客様をお席にご案内します」
私はオーダー希望のお客様を席に通した。
手際よく男性社員の藤田さん(仮名)が私の代わりにお客様にお出しするお茶を入れてくれた。
カタログを用意していると、さっきお茶を入れてくれた藤田さんが何故か私をジ~っと見ている。
しかも鳩が豆鉄砲を食らったかの様な顔で。
「4名様でしたよね?」
藤田さんが言葉を発する。
「いえ、三名様でしたよ?お父様とお母さま、そして息子さん」
それを聞いて藤田さんは更に挙動不審になって、完全に固まってしまった。
ここで私は察した、藤田さんは全く霊感が無いけれど今回はたまたま“視えた”のだなと。
確かにあの家族と一緒にもう一人いました。でもそれはこちらの世界の住人ではなく所謂“あちらの世界の人”です。
私にも視えていました。あのご家族と一緒に来店して、一緒に売り場を見ていました。身長150センチあるか無いかの小柄なおばあさんが。
「どんな人でした?」私は藤田さんに聞いてみた。
「…小柄な女性で、ご年配のぉ…」目を泳がせながら必死に答える藤田さん。こう言ってはなんだが、なんともコミカルだ。
「あ、やっぱり!それ幽霊ですよ。私も視ましたもん」私の発言に苦笑いする藤田さん。その後、明後日の方角を見つめる。頭の中でさっきの出来事を必死に処理しているであろう姿が垣間見える。
お客様が帰ったあと、藤田さんは自分に言い聞かせるかの様に「やっぱり3人でした!もともと3人でした!」と発言した。そんな藤田さんに私は笑いをこらえるのに必死だった。
きっと認めたくないのだろう。しかし、藤田さんの体験する心霊現象はこれで終わらなかった。
翌週、仕事中に藤田さんが再び明後日の方角を見ていた。これは何かあったに違いない。私は藤田さんに話しかけた。
「藤田さーん、どうしたんですか?考え事ですか?」すると藤田さんは私が期待していた
通りの言葉を返してきた。
「実は昨日、一人で残業をしていたら怖い事があって……」
藤田さんの体験を藤田さん目線でお伝えすると内容はこうだ。
昨日閉店後の店内で一人残業をしていた。
節電の為店内の照明はカウンター周り以外全て消してPC作業を行っていた。
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