ひっぱりおばけ
投稿者:リュウゼツラン (24)
「布団から足を出して寝ると、引きずり出されて連れてかれるぞ」
従兄弟の父親にそう言われて僕はおびえた。
月に一度は従兄弟の家に泊まりに行っていた僕は、その日も足を出すことなく、従兄弟二人と川の字になって眠った。
でも寝ている間にふと、掛布団をずらし、足を露わにしてしまっていた僕の足首は、何者かに掴まれる。
パニックになりながらも必死に足をばたつかせて、なんとか振りほどこうと足搔くけど、何者かは怯むことなくどんどんと僕の身体を下へ下へと引き摺って行く。
大声で助けを呼ぼうにも声が出ない。泣きながら手を伸ばして掴んだのは従兄弟の腕だった。彼は僕の足元を見ながら震えていた。
恐怖で顔を引きつらせながらも、もう片方の手で僕の手をしっかりと掴んでくれた。
きっと数分間でしかなかったんだろうけど、一時間にも感じた僕の身体を使った綱引きは従兄弟の勝利に終わり、僕は無事にこの世に留まることができた。
去年、親戚が集まった時に「そういえば昔、うちに泊まりに来た時に引っ張られてたよね」と従兄弟は言った。
怖いこと思い出させるなよーと、おどけながらも、続く彼の言葉に僕は笑顔を崩さざるを得なくなる。
「あの時さ、押し入れからおばさんが身体乗り出して、めちゃめちゃ怖い顔で足掴んでたんだよね。あれ、あとで気づいたんだけどさ、うちの近所に住んでるおばさんだったんだよ。去年死んじゃったらしいんだけどね」
笑いながら話す従兄弟が僕は一番怖かった。
生きてる人だった事にビックリ