大叔父の葬儀
投稿者:YoyoYoyoY (52)
葬儀場に着き、白と黄色の菊の花と紫色のデンファレで装飾された祭壇には、いつもの朗らかな大叔父の写真が飾ってありました。
大柄だった身体はすっかり細くなり、静かに眠るように横たわっています。
「おじさん、第二次世界大戦で左足に銃撃を受けて大きな銃創が残ってたよね」
死装束に包まれた姿を見つめながら、「お疲れさまでした」と挨拶をしました。
喪主である大叔母は、祖母の妹に当たる人物です。
4人姉妹だったので、一人くらいは跡取りを迎えて欲しいと曽祖父が要望したようです。
それではと、大叔母が養子として迎えたのが大叔父でした。
そう言えば、身内の死を予見する歯が抜ける夢は全部治療した歯でした。
大叔父は養子だったから、親族でも私との血の繋がりがありません。
なるほど、だからちゃんとした奥歯ではなく、治療済みの奥歯だったのだと改めて思いました。
お通夜では、大叔父の思い出話を集まった親族で語り合いました。
みな、それぞれの話が飛び出し関わり合いの深さが見て取れました。
そして翌日の葬儀を迎えました。
親族一同から、大叔父のゲートボール仲間や俳句同好会のメンバーなど、定年後の人生を共に楽しんでくれた仲間が参列して下さいました。
式は静かに穏やかに進み、ご住職の唱える読経も式場に響き渡って行きます。
私はふと祭壇の隅に目が行きました。
何かが光っているのです。
それは白っぽい小さな光ですが、どんどん大きく濃くなっていきました。
「うわ~何か変なものが飛んできた。もう少しで終わるのに~」
私はヤキモキしながら光の玉を目で追いました。
それと同時に、棺の左右にあるロウソクの炎も勢いよく燃え始めたのです。
真っ直ぐ天に向かって火柱を上げるロウソクは、まるで意志があるかのようでした。
光と炎のコラボレーション?などと考えるくらい、光は炎のような濃い赤色に変わりました。
祭壇の花の上に止まってみたり、棺の上に乗ってみたりと
アクティブに飛んでいましたが、読経が止むと同時に静かに姿を消しました。
隣に座っていた妹が、「お姉ちゃん何か変なもの見えてたでしょう?」と囁きました。
「うん、光の玉が飛んで来てたかな」妹も不思議な気配を感じていたようです。
「おじさんは、自分の人生に悔いがなかったみたいよね、何となくそんな気がするわ」妹が大叔父を見送りながら言いました。
「うん、何か清々しいお葬式だったね」光の玉は大叔父の魂だったのでしょうか。
それから49日が終わる頃、私の夢の中で大叔父が立っていました。
私は幼い子供に戻って見上げていました。
大叔父は仕事着のような、よそ行きのような白っぽいスーツを着用しています。
「これからどこへ行くの?」私は問いかけました。
「ちゃんと終わったから、おばあのとこへ行く」と大叔父は言いました。
おばあとは、私の曾祖母のことです。
大叔父は、婿養子だったので曾祖母と一緒に暮らしていました。
おっとりのんびりな性格だった二人は仲が良く、本当の親子と思える間柄でした。
「いってらっしゃい」私は手を振り、そして目が覚めました。
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