私のための歌
投稿者:ぴ (414)
短編
2022/12/25
17:46
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就職難でなかなか仕事先が決まらず、毎日自宅とハローワークを行ったり来たりして落ち込んでいたときに、私はその歌を聞きました。
テレビで聞いたこともない歌でしたが、なんとなく私の胸に刺さって抜けませんでした。
その歌の歌詞がまるで私の境遇のようで、勝手にポロポロと涙が溢れました。
その歌が心の支えになり、就活を頑張れたのです。
その歌が聞こえてくるのは、決まって深夜0時を過ぎた頃でした。
アパートの壁が薄すぎるせいで、どこの部屋から聞こえてくるのかも分からなかったし、誰が歌っているのかも特定できなくて、私は歌の主を探しました。でも全然見つかりませんでした。
その歌に助けられるようになってから程なく、私はなんとか仕事を見つけることができました。
そして就職したその日から、あの歌は聞こえなくなりました。
そんな話をアパートで長く住んでいるご近所さんにしたところ、私は驚くことを聞きました。
なんでも、私が住んでいる部屋の前の住人はシンガーソングライターをしていたらしいのです。
でも若くして病にかかり、亡くなったと聞きました。
もしかしたら私が聞いたあの歌は、別の部屋からではなく、自分の部屋から聞こえていたものかもしれません。
普通なら怖がるところだと思いますが、私のためにその人が歌ってくれていたのかもしれないと思うと、とても温かい気持ちになりました。
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