不思議な友達
投稿者:take (96)
短編
2022/12/10
22:02
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私の父に聞いた話です。
父の子供時代の話なので、昭和四十年前後でしょうか。
その頃は子供の数が多くて、毎日十人以上が集まり、中にはよく名前を知らない子がいても、すぐに仲良くなり、暗くなるまで野球やかくれんぼ、鬼ごっこなどに興じていたそうです。
その中に、よく遊んでいる男の子がいたのですが、毎日同じ服を着ていて、髪もボサボサ、風呂に入っていないのか手足もちょっと薄汚れている子でした。
それでも抜群に運動神経が良く、バク転を軽々と決めて足も速い人気者だったそうです。
その子がある日、帰り際に「もう明日から遊びに来れないんだ」と言います。
なんで? と、父や他の子供たちが聞くと「家がなくなるから」と言ったのだそうです。
よく意味がわからないまま、解散してそれぞれ家に帰ったそうですが、その夜、住宅街のはずれにある一軒家が火事になり全焼しました。その家は空き家で誰も住んでおらず、人的被害はありませんでした。
そして、次の日から本当にその子は遊びに来なくなってしまったそうです。
「後でその時の連中と話題になったんだけどな、誰もその子と学校で顔を合わせたことがないし、家の場所を知らなかったんだよ……それに、その子の名前を誰一人、どうしても思い出せないんだ」
と、父は首を傾げていました。
その空き家に棲んでいた何者かだったのか、ただの偶然なのか……今はもうわかりません。
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