熊かと思った

何もいないんだよ。何も。
数秒前までここにいたはずの”何か”はどこにも見当たらなかった。

森の中とはいえ、ここは開けた場所。
逃げる姿が見えないのはどう考えてもおかしい。
クマの幽霊？そんな話あるか…？？

安心と恐怖で、彼女の前なのに子供みたいに泣いた。

夢を見たわけでもないし、彼女の記憶もしっかりしてる。
クマの存在もちゃんと認識してるし、俺が寝ぼけたわけではない。

ラジオのボリュームを上げて、ケータイで音楽流しながら寝た。

翌日、鍋にあったカレーと魚の骨が綺麗になくなってた。

山の持ち主である知り合いにそのことを伝えると、
「山の神様でねえの？」なんて適当にあしらわれた。