親切な友人
投稿者:やうくい (37)
気づくと実家に着いていた。
「しっかりしな。今からが一番大事なんだから。」
姉は例のゴミ箱を抱え、庭に向かった。
ゴミ箱の中身を外に出し、あちこちから色々なものを引っ張り出してくる。
太い薪。酒の入った瓶。刀のようなもの。木の台(三方と呼ぶらしい。)その他、私にはよく分からないものが沢山あった。
それから姉は白装束に身を包み、水を何度も頭から被った。
「今からあんたはAや女の霊と縁を断ち、Aから貰ったものはAに返す。そういう儀式をするんだ。あんたの意思が弱かったり、少しでも相手の事を思いやったりしたら成功しないよ。」
「Aのことはよく分かったし、女の幽霊なんて姿も見たくない。覚悟はできてるよ。」
「うん、じゃあ飲め。」
姉は酒の瓶を突き出してきた。
「えっ、全部?」
「全部吐くまで。」
どうやら本気のようだ。覚悟を決めた私は酒をラッパ飲みした。
いくら頑張ってもなかなか減らなかったが、すぐに気分が悪くなり、吐いた。
姉は三方の上に例の御守りと髪の毛を置き、Aの私物を燃やしながら、何やら複雑な祝詞を唱えているようだ。
私はまたラッパ飲みし、吐いた。
何度か繰り返すうちに、意識が遠くなり、そのまま私は気絶してしまった。
「終わったよ。」
気がつくと、姉が隣に座っていた。
ずいぶんな儀式だったのだろう。白い服は煤に塗れ、姉の目は充血している。
「もう俺は大丈夫なのか?」
「わからない。Aがどの程度できる奴か知らないから。霊の方は大丈夫。まぁ、次に心霊スポットに近づくなら霊の前に私があんたを殺してやるよ。」
「ご迷惑おかけしました…」
どうやら私は助かったらしい。ほっとすると同時に、姉への感謝が胸を込み上げた。
「あのさ、姉ちゃん。」
「あっ、言い忘れてたけど
ガソリン代、儀式料、迷惑料込み込みで
15万円払ってもらうから。」
姉への感謝が下の方に流れていった。
次の日から私は普通に大学に登校したが、二度とAに会うことはなかった。
殺そうとした相手の顔など見たくもないが、Aがいなくなったことで、自分に友達がいないことを痛感した。
それから心霊に関する物の一切を、私は避けるようになった。二度とあんな思いはごめんだ。
これは、私が大学生時代に体験した、親切な友人の話だ。皆さんも、親切な人の言葉を、鵜呑みにはしない方がいいかもしれない。
怖面白かったです!!
その後のAの様子が書いてれば更に良かった。
>>2
友達いないからAの情報すら入らないのがリアル。
最高でした!