優しさの理由

※東日本大震災についてふれています

私が最初に就職した会社にAさんという上司がいました。とても明るくおしゃべり好きな方で、口下手でなかなか同期に馴染めずにいる私をよく気遣ってくださいました。

Aさんにとても感謝する反面、困ってしまうことも度々ありました。
やたらと食事やお茶に誘われるのです。

Aさんも私も女性なのでその辺りの気兼ねはいりませんが、仕事の担当も違い20才近く年上の方と職場以外の場所で何を話せばいいかわからなかったのです。

ついに断りきれず仕事終わりにAさんのお宅へお邪魔すると、Aさんのお友達だという初対面の女性がいました。

最初は当たり障りのない話をしていましたが、私が何気なく趣味の御朱印あつめの話をしたところ空気が一変しました。

「○○寺へ行ったの？魂が汚れてしまったね…」「☆☆神社は金儲けしか考えない悪い神様を奉る悪い神社」

「でも××様の教えを守れば大丈夫」
「あなたが××教を信じれば先祖ごと救われる」
Aさんとそのお友達が熱弁をふるい始めました。

Aさんが私に優しくしてくれたのは入信させるためでした。
(暗くて気弱そうだから狙われたんだ、親切なんかじゃなかったんだ)と悲しくなり、きっぱり断ろうと声をかけた私を遮ってAさん達が口にした言葉は今でも忘れません。

「東日本大震災も××様の祈りで軽く済んだ」
「××教徒の家だけ波が避けていった」
「政府が調べたら亡くなった人の中に××教徒はひとりもいなかった」

「性根の悪い○○教徒はひどい亡くなり方をした」

私は被害の大きかった地方の出身です。

ライフラインが何日も止まったことも、水をもらうために毎日４時間並んだことも、余震が怖くて眠れなかったことも全部××教徒じゃなかったから？

怒りで頭が真っ白になったことも人を怒鳴りつけたことも初めてでした。

信者だけを選んで助ける奴が神なのか、そんなセコいやつ最低だ、謝れ、全部に謝れ！！！と泣き叫び、怒り狂うAさん達を置いて全力で逃げ帰りました。

数日後、同期がそっと「Aさんがめちゃくちゃあなたの悪口言ってるけど何かしたの？」と声をかけてくれました。事情を説明しようとしたら「もしかして宗教？」と言われ驚きました。

なんでもAさんの勧誘は有名で先輩から注意するよう言われていたようですが、すでにAさんにマークされていた私には伝わってこなかったようです。

Aさんの信仰する宗教を悪く言ってしまったことは反省していますが、他の宗教を悪く言ったり、騙し討ちのような勧誘をする宗教には入りたくないのが正直な気持ちです。

早々にその会社は辞めてしまいました。
皆さんも甘い顔で近づいて来る方にはご注意ください。