エレベーター
投稿者:四川獅門 (33)
短編
2021/02/21
22:49
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キッ…キキッ…
佐藤さんはパニックになり、「閉まる」ボタンを乱暴に連打する。エレベーターはやはり反応しない。
ぼんやりと照らされる老婆がエレベーターに近づいてくる。
点滴台を引く音は、もう目の前から聞こえていた。
ボタンを連打する佐藤さんの手がギュッと掴まれる。
しわくちゃで骨ばった手。
骸骨のように痩せこけた老婆は佐藤さんの顔を覗き込み、
『のせて』
そう言った。佐藤さんは気を失った。
佐藤さんはエレベーターを利用した他の従業員に発見された。自分の体験をその場で話す訳にもいかず、体調不良で失神したという事にした。
そのビルのある場所が昔病院だったと知ったのは、それからしばらくしてからの事だった。
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