エレベーター
投稿者:四川獅門 (33)
短編
2021/02/21
22:49
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2019年 大阪府 某所
オフィスビルで事務をしている佐藤さんは、その日もいつも通り会社に向かった。
ビルのエレベーターに乗り、自分の職場である4階のボタンを押す。
扉が閉まり、インジケーターのランプが点灯する。
1F
2F
3F
4F
何故か止まらない。
5F
6F
7F
8F
ついにインジケーターはどの階にも点灯しなくなった。
困った佐藤さんは開閉ボタンを押したり、4階を指定するボタンを連打した。
すると、ウーンと音を立てて、エレベーターのドアが開いた。
そこは真っ暗なフロアだった。
まるで冷凍庫を開けたような、冷たい空気がエレベーターを満たす。
消毒液のような匂いが鼻をついた。
怖くなった佐藤さんは、再びボタンを押すが、エレベーターは反応しない。
目の前の暗闇を、エレベーターの薄明かりがぼんやり照らし出す。
暗闇に目が慣れてきた佐藤さんは、見てしまった。
目の前に広がる空間に、左右に2床ずつ、白いベッドが置かれている。
病室だ。
右奥のベッドは、天井から吊られたカーテンに半分覆われている。
そこから音が聞こえる。
キキッ…キキッ…キキッ…
カーテンの影からボサボサの白髪頭がぬっと出てきた。
患者着の老婆がフラフラと点滴台を引いて、こちらに向かってくる。
点滴台のタイヤが、真っ暗なフロアに嫌な金属音を響かせる。
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