誘う電子の声
投稿者:すだれ (27)
電子機器と相性が悪いのだと、深夜、車を運転する友人は言った。
助手席に座る此方は、首を傾げながら話の続きを促すことになる。
「相性が悪い、とは?詳しく聞いていいのか?」
「いいよいいよ。変な話だけどデリケートなヤツじゃないし」
いわく、彼女が扱う機器だけ誤作動が起きやすいのだと。
手に持った瞬間懐中電灯が切れ、他の人に渡すと明かりが点く。
部屋に入った瞬間に触れていないテレビが点く。
端末で通話中のノイズは日常茶飯事で周囲の知人たちが先に慣れてしまった。
あらゆる機器に影響を及ぼしてきたが、幸いと呼んでいいのか、誤作動が起きるのは友人が所持している機器だけだった。
「身体から変な電波出してるんじゃないかって、本気で心配されたこともあったよ」
「生活に支障が出そうなら、解明もやぶさかではないと考えるだろうな」
「携帯が通じにくいくらいかな、困ってるのは。…それでさ、実際どうなの?『そういうの』ってあるの?」
そういうの、とは「身体から出る変な電波」のことだろう。
「変…変哲もないものになるが、関係しそうなのは静電気だろうか」
「冬にドアノブ触ってパチってなるやつ?」
「人間の身体は差があれど常に静電気を帯びている。君が言うドアノブとの間に走る火花は放電の瞬間だな」
「アレってなりやすい人とそうじゃない人いるよね?」
「なりやすいのは、日常生活で放電が上手くできず体内に電気を溜めてしまうタイプだな。帯電体質という」
「身体に電気が溜まっちゃうの…!?」
「機器に内蔵されている基盤は精密機械だし、電子機器自身も、電気で動く以上静電気を帯びている。静電気が原因で誤作動や故障を引き起こした事例は確かにあるし、帯電体質の人間からの放電で壊れる…なんてこともまあ、否定はしきれないかな」
「静電気で壊れた事例あるんだ…」
「あとは、特定の人物が関わると器具や装置がやたらと壊れる現象が、ある物理学者の名前をつけて存在してる、とか」
「その現象、科学的解明は?」
「いや、どちらかと言うと物理学の界隈で囁かれてるジョークみたいなものだから」
「えー…」
心霊体験を聞かせてくれる友人たちから、稀に見解を聞き返される時がある。
時に科学面から、時に民間伝承の面から、立て得る仮説を連ねていくが、
「オカルトというかスピリチュアルというか、その方面の切り口だと、いわゆる霊感の強さと静電気…帯電体質は密接な関係があるともいわれている。霊体、と言われる存在が電気とたびたび関連付けられ、霊が電子機器に干渉して何かしらのメッセージを伝えようとしている、と解釈する事もあるな」
「あ、そっちの可能性もちゃんと追うんだ」
「どれも100%矛盾なく説明できる説ではないからな」
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