魂の行き場所
投稿者:ねこじろう (147)
俺は絶対にいやだ!」
俺は何も答えられなかった。
というのは死んだ後のことなどは誰にも分からないことだから。
そこで俺は尋ねた。
「じゃあお前は、どう考えているんだ」
篠原は再び天井の一点を見つめてから、ゆっくり語りだした。
「俺は、
たとえ肉体が滅んだとしても魂は永遠に残っていくと思っている。
そして現在まだ生きている者たちと直接は交流出来ないとしても、何か別の方法で出来ると思っている」
「別の方法?」
「そうだ。
例えば
ベルを鳴らしたり、
机を叩いたり、
虫の調べを使ったり、
また別の者の口を借りたり、
いろいろな形で」
「なるほど確かにそうかもしれんな」
本当は全く理解を超えた考えだったが、俺は敢えて彼のために共感した。
すると篠原は、こんな意味深なことを言った。
「なあ、もしも、もしもだよ。
俺が死んでしまい魂だけになった後、他の人の姿を借りてお前に声をかけるかもしれんが、その時は怖がらずにいてくれるか?」
「ああ、もちろんだよ」
そう言って俺が改めて篠原の横顔を見ると、彼は満足げに微笑んでいた。
その後も俺たちはいろいろなことを取り留めなく語り合った。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
窓を被う白いカーテンの隙間から
朝の柔らかい陽光が射し込んできている。
トタン屋根の雨音は既に聞こえなくなっていた。
いつの頃か急に無口になった篠原が気になったから、ふと横を見ると瞳を閉じたままポッカリ口を開いている。
涙してしまいました。
友達の分も生きて下さい。