炎天下の下で
投稿者:とくのしん (65)
意味がわからず私は携帯を耳に当てたまま男性に視線を移しました。男性も同様に額から大粒の汗を流しながら、その場に立ち尽くしています。その表情はまるで見てはいけないものを見てしまった、そんな引きつった表情を浮かべています。
するとパトカーが1台駐車場に入ってきました。近づいてくるパトカーを見ていると電話口から応答を求める声がします。
「もしもし、すみません。パトカー来ました」
「それで男の子は?」
「それが・・・車内にいないらしいんです」
「え?いない?どういうことですか?」
「あのどう説明していいかわからないんですが・・・」
駆け付けた警官に夫と男性が説明を始めました。警官は割れたガラスの隙間から手を入れてカギを開けました。カギを開けて後部座席のドアを開けると、そこには誰もいません。
「誰もいないですよ」
少し怒ったような口調の警官が私たちに問いかけてきます。
「さっきまで声はしていたんだ。ここにいる誰もがそれを聞いている。それに姿だってうっすらと窓ガラス越しに見えていた」
ご主人はそのぶっきらぼうとした警官に反論するかのように言い返しました。
「しかし現に誰もいないじゃないですか」
「悪戯とでも言いたいんですか?見ず知らずの方とこんな手の込んだ悪戯しますか?それなら母親に訊いてみたらいかがですか?」
「その母親はどなたですか?」
「そこに・・・」
後ろにいたはずの母親の姿がそこにありません。さっきまで確かにいたはずなのに、忽然と姿を消していました。
呆然としている私たちの下に、駐車場の警備員とみられる男性がやってきました。
「パトカーが入ってくるのが見えたのですが、事故か何かですか?」
警備員と思しき男性に事の説明をしていると
「あぁ、その車。もう1ヵ月以上も放置されているんですが、持ち主が現れましたか?」
その言葉に私たちは凍り付きました。真夏の暑い日差しを受けてもなお、背筋が凍るような悪寒を感じていました。私たちが見聞きした“あれ”は一体・・・。
私たちにそれぞれ事情聴取が行われましたが、一貫して皆それぞれが同じことを言っていること、また私たちが顔見知りでないことから悪戯の類でないことを理解してもらうのに、そう時間はかかりませんでした。
後日談として警察から聞いた話では、あの車は盗難車として被害届が出されていたそうです。所有者は男性だったそうですが、その男性とも連絡が取れないとか。それ以上の説明はありませんでしたが、これ以上深入りするつもりもないため、それ以上訊いたりしませんでした。
夏が来る度思い出します。
あの子供は車内で置き去りにされた子供だったのだろうか?
あの母親は何者だったのだろうか?
数年経った今でもショッピングモールにいくたびに、それを思い出してしまいます。
N県在住 主婦Nさん(35)の体験談より
不思議な話ですね。
子供の泣き叫ぶ声をみんな聞いていたのに。
どピーカンの真っ昼間でしょ???
投稿者です。
『炎天下の下』というタイトル、よくよくみれば重言になっておりますが、ジリジリと焼けつくような暑さが伝われば・・・という意味合いが皆さまに伝われば幸いです。
昼間でも夜中でも出るんですね。