炎天下の下で
投稿者:とくのしん (65)
「近くのパトカーを向かわせました。救急車もこちらで手配しましたが、どのような状況ですか?」
電話口の女性警官に、子供が泣き喚いていること、今は窓ガラスを割って救出しようとしていることなどを伝えます。
「子供がいる窓を割ると危険です。運転席の窓ガラスを割りましょう」
夫が男性にそう諭すと、ご主人はそれを聞き入れ2人で運転席側の窓ガラスを割ろうとし始めました。夫が思い出したように自分の車に戻り、備え付けのジャッキを持ってきました。
「これで割ります!離れてください!」
そう大声で注意を促し、思い切りジャッキを窓ガラスに打ち付けました。
ビシィ!
という音とともに窓ガラスに大きな亀裂が入ります。フィルムを貼っているせいか、粉々になりませんでしたが、夫と男性はそのヒビの入った窓ガラスを注意深く割っていきます。
「もう少し!あと少しだからな!坊やもう少し辛抱しておくれよ」
夫とご主人は汗びっしょりになりながら男の子に問いかけています。
“もう少しで男の子は助かる”
そんな安堵感から私は全身から力が抜けていく感覚を覚えました。と、何やら夫と男性の様子がおかしいことに気が付きました。窓ガラスを破りドアを開けようとする手が止まっているのです。二人は何かに怯えたように車から後ずさりしているではありませんか。
「もしもし、どうされましたか?」
警官の呼びかけに私は思わずはっとして返答します。
「あ、あの運転席側の窓ガラスを割ったところなんですが・・・」
「男の子は無事ですか?」
警官の問いに答えるべく私は夫に駆け寄り、男の子の安否を尋ねます。
「ねぇ男の子は?男の子は無事なの?」
「いや、その」
「まさか間に合わなかったの!?」
「そうじゃなくて・・・
誰もいないんだよ・・・
車の中、誰もいないんだ・・・」
不思議な話ですね。
子供の泣き叫ぶ声をみんな聞いていたのに。
どピーカンの真っ昼間でしょ???
投稿者です。
『炎天下の下』というタイトル、よくよくみれば重言になっておりますが、ジリジリと焼けつくような暑さが伝われば・・・という意味合いが皆さまに伝われば幸いです。
昼間でも夜中でも出るんですね。