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心霊

INVIさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

引っ越し
短編 2022/10/12 11:50 2,210view

これは昔、一人暮らしを始めた友人の住むマンションで実際にあった話です。

友人は家族や兄弟が多くて、大学に入ったら一人でいる時間をもっと作りたいってよく言っていました。 そんな彼を知っているから、彼が一人暮らしをするってなった時にはこちらもうれしくなってね。ぜひ、引っ越しの時には呼んでくれって言っていたんです。

マンション自体はさして立地がいいわけでもなかったものの、それにしたってやけに家賃が安いんですよ。とはいえ、大家に聞いてもたまたま人気のない場所だから安いだけだって言うんです。 まぁ、当時友人はまだ学生でしたから。気味の悪さよりも、安さの魅力の方が勝つのも分かるってもんだ。 実際、前に住んでいた人にも特に問題はなかったらしいですからね。

そんなこんなで友人は引っ越すことに決め、荷物を運ぶ際には引っ越し業者を呼ぶほどでもないので僕を含めて数名が友人の手伝いに駆り出されたんです。 そして、夕方には無事引っ越しが終わって。他の友人たちは用事があるので帰ったものの、僕はどうせなら安さの理由も知りたいから今回は泊っていいかと友人に聞きました。

すると友人も、今回は手伝ってもらったし別にいいぞ、と乗り気な様子です。 そんなわけで、僕たち二人は夜にコンビニで買ったお菓子やなんかを食べながら、今後は大学でどのサークルに入るかとか、どの授業出るのかとかどうでもいい話をしていました。

そうして夜も更けた深夜。友人の家には布団は一組しかないので、僕はクッションを枕代わりにして毛布を借りてそれで寝ることにしました。 春とはいえ肌寒かったものの、それでも寝られないほどでもない。そう思って目をつぶっていると、誰かの足音がするんです。

しかし隣からは、友人の寝息。つまり、この場に私たち以外にもう一人いる。 私は恐る恐る片目を開きます。すると、そこにはぼやーとした人影のような何かがいました。 最初は、幽霊なのか泥棒なのかは確信が持てなかった記憶があります。なにせ、暗い中片目で見ているだけでしたから。 しかし、部屋の中央であまりに動かない姿を見て、これは泥棒じゃおかしいと確信しました。 だって、部屋の真ん中で手際も悪くじっとしている泥棒なんているはずもないですから。

とはいえ、だから何ができるってわけでもありません。僕は寺生まれでもありませんし、所詮はただの学生です。 友人のことは気の毒だと思いつつも、この場は幽霊に目を付けられないように静かにしていよう。

そう思って、ふと気が付きました。 友人は、そもそも一人の時間が欲しくて一人暮らしをするのです。それなのに、実際は幽霊と二人なんてのはあんまりだ。 だからと言って私は除霊もできないし、そもそもそういったものは多額の金銭を要求される。大学生の我々には到底支払えません。 いろいろなことを考えながら、友人の寝顔を見ると彼はのんきに寝息を立てていました。

実をいうと、私は友人に結構迷惑をかけたことも多いです。借金を負ったこともあり、その時は友人もお金を貸してくれたこともありました。現在は返しきっているものの、彼には頭が上がりません。 それなのに、彼を見捨てるのもどうなのか。そう思った私は今思うとおかしかったのでしょうか、幽霊に向かって、友人が起きないくらいの声量で声をかけたんです。

「ここにいるのは、迷惑になると思いますよ」 その声に、幽霊が反応して振り返ります。その顔は、なんとなくだけど女性の顔に見えました。 ここからは彼女と呼びますが、彼女は自分が見られていることに気が付いたのか、それとも他に理由があったのかだんだんと姿を消していきます。 しかし、それは消えるというよりも移動しているようにも見えました。 「じゃあ…」 彼女は一言だけ、何かを言おうとしますがその声はか細く聞こえません。

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コメント(1)
  • 人恋しいからってキーホルダーを持っていたらダメじゃん!お金は順調に返しているのかな?      

    2022/10/12/21:26

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