何かが来ている
投稿者:INVI (2)
これは、数年前に友人が体験した話です。
その友人は数年前まで、亡くなった両親の残した一軒家に住んでいたんです。もっとも、友人はその時も今も独身で一人で住むにはその家は大きすぎる。
でもまぁ、思い出のある家だしこのまま住んでいてもいいか。なんてその時は思っていたそうです。
田舎なので近所に他の家は少ないし、近隣トラブルもないからって。
もっとも、変な人がいないわけでもありません。
友人の家からちょっと離れたところ、といっても田舎では十分近所と呼ばれる距離に一人のおじいさんが住んでいたんです。
そのおじいさんはすごく偏屈な性格をしていて、妻にも子供たちにも縁を切られてここに引っ越してきたとかで、誰も彼にかかわろうとはしない。
おじいさん自身も人と積極的に話すことはしないので、それでもよかったんですが。
でも、ある時急におじいさんが友人の家にやってきたそうです。
いったい何だろう、なんてのんきなことを思っている友人をおじいさんは怖い顔でにらみつける。
そして、静かにこう言ったそうです。
「お前、俺の花壇を荒らしたか?」と。
実はこのおじいさん、庭が結構広いもんだからそこで花を育てていたんですよ。といっても、はた目から見れば乱雑に生えてるだけにしか見えないんですが。
とはいっても本人にとっては大事な花。それがなんと、朝になったら一部がつぶされていたそうです。
とはいえ友人にはそんなことをする動機も義理もない。
おじいさんもそれはわかっていたのでしょうね。友人がいいえ、わかりませんというと何も言わずに引き下がった。
友人やおじいさんの家のほかにも周囲には何件か家があったものの、他の人たちは足が不自由だったりで苦労しておじいさんの家まで来て嫌がらせをする気力もない。
結局、その時は友人も動物か何かの仕業かもと思ったそうです。
しかし次の日、昨日のことが気になって友人はお爺さんの家の前に行きました。
そこにはおじいさんの姿はなかったものの、外からでも庭は見えた。
見れば確かに、花の一部が無残につぶされている。
しかもまたそのつぶされ方が奇妙なもので、庭の外からおじいさんの家に向かって一直線に花が押しつぶされてたんです。そして、花壇の真ん中くらいで引き返したのかその先の花はつぶれてはいない。
その時は友人もなんとも思わなくて、ただ気の毒だなぁと思っただけでした。
しかし数日後、事態は一変します。
なんとあの偏屈なおじいさんが、家の中でなくなっていたって。死因は、心筋梗塞。
それを聞いた瞬間、なぜか友人はふと花のことを思い出した。そう言えば、最後まであの花をつぶした犯人は見つからなかったのか?
なぜだか無性に気になった友人は、もう一度おじいさんの花壇を見に行った。
世話をする人がいなくなったからか、その花壇は雑草なんかが伸び始めているところだった。しかし、その一角が異様なことは一目見ても明らかだ。
見れば花壇の花は前回と同じようにつぶされていた。外から家へ、まるで一本の道のように。
前回見た時と違うのは、それが途中で止まらずにそのまま伸びで、家の方まで続いていたことくらい。
死神の足跡に思えて怖い