引っ越し

そのうちに彼女の姿は見えなくなり、私は再び眠りにおちました。 次の日、私は友人に昨日は何かあったかと聞いたものの、彼は何にも気が付いていなかったの不思議そうに何もないだろうと笑いました。 その鈍感さに呆れつつ、ふと昨日の幽霊が消えていった方向が気になったのでそちらに向かいます。

そこは、キッチンでした。 こんなに安いのにいいキッチンだなと感心したものの、ふとキッチンの床に隙間があいていることに気づきました。 そういえば、床下収納まであるんだっけか。そう思ってそこを開くと、中には小さなゆるキャラのようなもののついたキーホルダーがあったのです。 これはお前のか？友人にそう聞いても、彼には何の覚えもない。そう聞いた瞬間に私はすべてを理解し、友人に言ってそのキーホルダーをもらいました。

友人の家からの帰宅後、私は何の気なしにネットで友人の家のあたりで事件がなかったか調べていたところ、SNSで面白い書き込みを見つけました。 なんでも、彼の住んでいた地域で昔に若い女子大生が彼氏にひどいフラれ方をしてキッチンで自殺をしたとか。 書き込みでは住所はぼかしてあったものの、特徴を聞く限りはおそらく友人の家のことに間違いはない。

確か、物件の中には一度お金で雇った人を住まわせることで何かがあったことをのせていない物件もあるのだとか。友人は、まんまと騙されていたのでしょう。 とはいえ、あれから友人の家には特に何の事件も起きてはいません。深夜に誰かがいるとか、そんな話は一切ない。おかげで、友人は人生で初めての一人での生活を謳歌しているようです。

一方で、私の家ではあの日から奇妙なことが度々起こるようになりました。 とはいっても、誰もいないはずなのに物音がするとか、人の気配がするとか、たまに水がちょろちょろと出しっぱなしになっているとかそのくらいのことではありますが。 リビングの棚を見ると、そこにはあの日持ってきてしまったキーホルダーが飾ってあります。 しかし、私はそれをお払いに出す気も、捨てる気もありません。 私はどちらかといえば、人恋しい性格ですから。