開かずの踏切の向こうは
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2022/10/08
15:27
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薄暗い歩道を織田は西に向かって歩きだす。
途中、首の異様に長い細身の女や、頭の割れたサラリーマン風の男にすれ違いながら踏切のところまで行く。
その時、彼はふと思った。
─もしかして最初にこの異世界に紛れ込んだとき、初めて出会った背が高く禿げた老人は、去年亡くなった田舎のじいちゃんだったんじゃなかったのだろうか?
織田は今度は北へと歩きだした。
しばらくすると、右手に見慣れたテナントビルが見えてくる。
入口自動ドアから入り、正面エレベーターホールに視線をやると、そこには2人の男女が立っていた。
一人は濃紺のスーツ姿の佐藤。
もう一人は白いスーツを凛と着こなす女性。
多分、大野明代だろう。
「佐藤!」
織田が声をかけたが、2人は振り向くことなくエレベーターに乗り込んでいき、正面に向き直り並び立つ。
それから
金属の扉がゆっくりと閉じていった。
【了】
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