美悠の観察日記
投稿者:ねこじろう (147)
せわしなく床を叩くような音が鳴り響き、
私はびっくりして半身を起こした。
どうやら、それは上の部屋からのようだ。
……ドン!ドン!ドン!ドン!
その音は断続的に、数分続いた。
自然のものでは無い明らかに人の意志の伴う音に、私はゾッとして金縛りにあったかのように布団の中で固まっていた。
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翌日仕事を終えた私は、午後八時頃家に着いた。
一階の和室に置いてある段ボールを開封し、洋服や食器類などを片付けていく。
あらかた終えた後、シャワーを浴び、ビールの缶を開けて居間のテーブルに座った。
ふと見ると、テーブルの片隅に昨日の変なノートがある。
昨日、2階の和室で見つけたものだ。
私はビールを一口飲むと、その「美悠の日記」というタイトルの大学ノートを恐々と手に取り、その表紙をめくった。
「許さない」という文字で埋められたページがノートの後半あたりまで続き、その後は日記が綴られている。
適当に飛ばしながら読んでみた。
二月三日
昨晩から粉雪が舞っている。
朝方庭を見ると、そこは白い世界に変わっていた。
なんだか童話の世界みたいで、とってもキ、レ、イ。
自然も多いし空気もきれいだし、ここに来て本当によかったとシミジミ思う。
あ、そろそろ、ジロウのエサの時間だ。
今朝は何をあげようかな?
でも、なんか面倒くさい。
冷蔵庫の奥にある傷みかけているものを、適当に混ぜてからあげれば良いだろう。
二月二十一日
今朝は雲一つない青空だ。
でも私の心はグレー。
というのは、昨晩ジロウがまた逃げ出していた。
さっき家の周辺を探したら、庭の柿の木の下にしゃがみこみ怯えた眼で私を見ていた。
やっぱり首輪に鎖ではダメなのかな。
何か他に方法を考えないと。
何が許せないの?