海で溺れたら謎の生物に助けられた話
投稿者:isola (3)
まさかHちゃんが流されたのではと周囲を見渡すも、Hちゃんの姿は何処にも見当たりません。
楽しく遊んでいる大人達の歓声と緩やかな波の音が聞こえるだけで、私の問いかけに応えるHちゃんの声は一切ありませんでした。
私は大きく息を吸い込むと、再び海中へ潜りました。
流されたのでは無ければ、もしかすると沈んだのだと思ったのです。
案の定、海中を見渡していれば、小さな体で手足をばたつかせているHちゃんの陰影が僅かに確認できました。
Hちゃんに何があったのかは分かりませんが、どう見ても溺れている様子から私は浮き輪の紐を離し、思いっきり勢いをつけて潜水します。
私は体力は無いものの、それなりに遊泳は得意でした。
体をまっすぐ下に向けて槍の様に突き進むと、そのまま海を払い除ける様に水を掻き、Hちゃん目掛けて加速します。
幸いなのがHちゃんが溺れてから発見が早かったのか、数メートル潜っただけで手が届く距離に居ました。
思いっきり伸ばした手がHちゃんの腕を掴むと、そのまま一気に引き上げます。
ですが、どうしてか重たいのです。
Hちゃんの体格は私とさほど大差が無いので、どちらかと言えば小4女子の平均体重を下回っているかもしれません。
にも関わらず、海中だと言うのにどんなに強く引っ張っても逆に私が沈みそうになる重厚感があったのです。
このままではジリ貧だと分かっていはいましたが、周囲に助けを求める猶予はありません。
私はグイグイと引っ張り続ける事で、牛歩の様に少しづつ海面へ近づく間、お願いだから息が続いてくれるよう願うのでした。
しかし、Hちゃんの手足の抵抗力が無くなったのを感じ取った私は、一瞬Hちゃんが死んじゃったのかと思い、ひどく絶望しました。
ですが、この時の私はそれでもHちゃんを引っ張り上げようと手を放す事はしませんでした。
私の心はHちゃんが死んじゃったらどうしようと不安と恐怖で押し潰されそうでしたが、自分の息が苦しくなってきた時、海底から青白い何かが上ってくるのが見えたのです。
苦しさのあまりにゴーグルの中に涙が少しづつ溜まっていた矢先の事でした。
その青白い何かが太陽光が差し掛かる範囲に上ってくると、それが上半身が人型で下半身が魚だと分かり、思わず苦しさも忘れて「ぶふっ」と貴重な空気を吐き出してしまったのです。
一瞬、人魚なのでは?と幻想的な事が脳裏を過りましたが、それは骨格の凹凸が不自然に丸まった様な体格で、皮膚も全体的にイルカやクジラに似た質感を帯びており、水かきがついた両手を構えていた事からどう見ても人魚というよりは魚人に近い存在に思えました。
何より、体毛の一切が無い艶やかな頭部と、顔の中央に開いた単眼は畏怖を孕んだものでした。
顔にはその単眼しか備わっていないのか、鼻や口といったパーツは見当たりません。
思わずバケモノを見た様な気分に陥りましたが、私は酸素が足りなくなったのか、だんだんと意識が遠のきそうになりました。
私の意識が途切れる寸前、そのバケモノは下半身をばたつかせる事も無く魚雷の様にこっちへ加速してきました。
その勢いでHちゃんの片腕と私の片腕を掴むと、海面へ引き上げるのです。
「ぷはーーーっ!」
空気を欲していた私は海上に頭が突き出ると一気に空気を吸い込みました。
辺りを見れば偶然なのか、私の浮き輪があったので急いで手繰り寄せると、同じように海上に顔を突き出して浮いていたHちゃんを引き寄せて、「Hちゃん!Hちゃん!」と頬を何度か叩きました。
怖いけど面白かった
怖いけどちょっと夢のあるお話ですね
すごい良いお話でした。海に囲まれた島に住んでますが、特に変なものには会ったことないので、会ってみたいなと思いました。(笑)
バニップ(bunyps)じゃないですか。?
怖いよぉ〜