ひとりじょうず
投稿者:ねこじろう (147)
「なあ、乃亜」
電話を終えた悠太が話しかけてきた。
「今度の土曜日だけど、一度、ママに会ってくれないかな?」
「いいよ
わたしも一度、悠太のお母さんに会ってみたかったから」
「良かった
じゃあ、前の日に改めて連絡するから」
そこまで言って悠太は「ちょっとトイレ」と立ち上がり、席を離れた。
─まあ、いずれは会わないといけない人だから、今のうちに会っておこうかな。
わたしは素直に嬉しかった。
というのは、悠太のこのお願いは、彼のわたしに対する信頼がより一層深まったといえるからだ。
わたしはホッと一息つくと、テーブルに置かれた悠太のスマホに、何となく目をやった。
画面には、送信着信履歴がズラリと並んでいる
いけないこととは思ったが、わたしはそれを手に取り改めて見た。
そこには本日の悠太の通信記録が時系列に並んでいる。
しばらくそれを見ていたわたしは、おかしなことに気付いた。
着) 12月5日 17時02分 乃亜
これは約束の場所に先に着いたわたしが、悠太に電話したときのものだ。
送受信の記録は、これが最後になっている。
─おかしいなあ、たった今、お母さんから電話があってたはずなんだけど、、、
何となく画面をスクロールする。
わたしの名前や彼の友人らしき名前とかはあるが、
「母」、「母さん」、「ママ」などの名称が見つからない。
もしかしたら、違う名称で登録しているのだろうか。
例えば、下の名前とか。
いや普通、子供が母親を携帯に登録する場合、まず下の名前とかではしないだろう。
わたしは不思議に思いながらも、スマホを元の位置に戻した。
そして約束の12日の前日のこと。
翌日の予定について悠太から電話があったのは、深夜零時に近い頃だった。
既に床についていたわたしは、布団の中で携帯を耳にあてる。
悠太の声はいつもとは違い、何だか暗い印象を受けた。
サイコっぽい!