お土産のピエロ
投稿者:ぴ (414)
私はそんな弟に一瞬怯み、そして一瞬その人形を取り返そうと思いました。
でも私が何か言う前に、弟はその人形をまるで圧迫するかのように無造作に掴んで、さっさと部屋に帰ってしまったのです。
私がどうしても気になって、後日弟の部屋であのピエロの人形を探したけど、どこを探しても見つかりませんでした。
弟に聞いたら「あれ?もう要らないから処分した。」と無感動に言われてしまいました。
私は「好きな子からおみやげにもらったんじゃなかったの?」と聞きました。
やんちゃな弟が嬉しそうに好きな人を報告してくれた日を思い出して、尋ねました。
そしたらその弟はまるで相手を忘れてしまったかのように、「そうだった?」と私に聞き返したのです。
とても冷酷で冷たい表情に見えました。
あの人形は弟の手で処分されたようです。
そして弟は変わったのです。
今思い出しても、おかしな出来事だったように思います。
あれから弟からやんちゃな可愛さは少しも無くなりました。
それまで遊んでいたのが嘘のように受験勉強に没頭し、そして難関校に合格して今は有名企業で働くエリートです。
でも私にはどうしても弟が他人に思えてならないのです。
あの日ピエロは涙を流していました。
あれがどうしてもまるで私に助けを求めていたように思えて仕方ないのです。
今の弟らしさのかけらもない弟を見ていると、もしかしたら本当の弟はもういないんじゃないかと思えます。
私はあの日、涙を流すあのピエロの人形を手放してしまったことを何よりも後悔しています。
本物の弟は弟に成り代わった誰かに処分されたのかもしれません。
私は大人になってからは家族とは距離を取るようになりました。
私の大切な弟の存在を奪ったあの弟のことを許せないからです。
そして、もしこれがすべて私のただの妄想だとしたら、そんな異常な考えをしてしまう自分が怖いと思っています。
なんか二重人格みたいな話ですね。
男子の場合ある日突然、性格や友達や人生設計が変わってしまう事が、思春期にはあります。
自分がそうでした。エリートにはなっていませんが、弟さんと同じ経緯です。私の場合小5の時でした。
おそらく弟さんは、女の子にプレゼントをわたされる時にキスされたとか、そういう事が有ったはずです。そういう経験をすると、思春期の男子の人生は180度ぐらい簡単に変わってしまいます。