お土産のピエロ
投稿者:ぴ (414)
あまりに頻繁に起こるので、両親に相談してみたけど、おおらかすぎる両親は「ネズミか何かかしら」と笑い飛ばして終わりです。
私は痺れを切らして、屋根裏を業者の人に調べてもらいました。
けれど最後まで何の音か原因は分からないままで、そうこうしている内に、弟がおかしくなりました。
いつもやんちゃで、両親を困らしていた弟が急に悪い仲間とつるむことを辞めたのです。
それどころか今まで遊んでいた友達とは180度違うきちんとした友人と付き合うようになり、交友関係に変化がありました。
最初は短い思春期が終わったと思って安心していた私ですが、会話する度に少しずつ違和感を感じ取りました。
発言が明らかに大人びていて、私が知る弟はいなかったです。
心配になって、父や母に相談してみたけど、両親は二人とも心配するどころかとても喜んでいました。
特に弟の将来を心配していた父は、やっと受験勉強に力を注ぐ気になったかと、弟を褒めたたえていました。
私以外の人間は突然変わった弟を簡単に受け入れているようでした。
でも私はどうしても違和感を拭えなかったのです。
その日も宿題をしながら、弟のことを考えていました。
そしたら部屋のドアがトントンと鳴ったのです。
私が何気なくドアを開けたら、廊下には誰もいませんでした。
音が鳴ったような気がしたけど聞き間違えだったのかと戸を閉めかけました。
そこでふと、あの弟のピエロの人形が廊下に落ちていることに気づいたのです。
なんで弟の部屋のピエロがここに落ちているのか分からなくて、とりあえずそれを拾ってみました。
じっくり見てみたけど、見れば見るほど不気味なピエロだと思いました。
だけど私は人形をじっくり見ていて、なんとなく懐かしいようなそんな気持ちになります。
なぜか分からないけど懐かしいにおいがして、ピエロと見つめ合っていました。
でも次の瞬間に私はそのピエロの人形を放り投げます。
理由はじっと見ていたら、手にぽつっと何か冷たいものが当たり、まじまじと見るとピエロの目からまるで涙のようにぽたぽた水が落ちてきたからです。
びっくりして私はとっさにピエロを床に向かって放り投げてしまいました。
慌てて拾い上げようとして、私はその手を引っ込めます。
私がピエロを拾う前に、いつの間にかやってきた弟がその人形を拾い上げたからです。
弟は笑顔でにこにことピエロの人形を見つめて、「こんなところにあったのか」と言いました。
私はその一つも悪意のなさそうな笑顔になぜか凍り付いたような恐怖を感じました。
2~3度その場の気温が下がったような気が確かにしたのです。
弟は人形の顔を無造作に握って、「姉さんごめんね。勉強の邪魔をしてしまったね」と言いました。
まるで弟のかけらもない他人行儀な口調でした。
なんか二重人格みたいな話ですね。
男子の場合ある日突然、性格や友達や人生設計が変わってしまう事が、思春期にはあります。
自分がそうでした。エリートにはなっていませんが、弟さんと同じ経緯です。私の場合小5の時でした。
おそらく弟さんは、女の子にプレゼントをわたされる時にキスされたとか、そういう事が有ったはずです。そういう経験をすると、思春期の男子の人生は180度ぐらい簡単に変わってしまいます。