かなしばり
投稿者:apamt (3)
金縛りに初めてあったのは高校生の頃でした。
実家のリビングで、テレビを見ながらコタツに入ってうとうととしていた時のことです。
急に身体が動かなくなる感覚に襲われて、起きました。
起きた、というより正確には意識がはっきりしているだけでさっきまで点いていたテレビも電気も全て消えてしまったかのように視界は真っ暗でした。
意識が起きているので聴覚もしっかりしていたため、テレビの音は聞こえます。
なのに視界が真っ暗、というより瞼が開かないのです。頑張って開けようとしても動かず、それは瞼だけではなく、身体全体に起こっている現象のようで、必死に身体を動かそうとしても全く動かず、さらには声も出なくなっていることに気づき、意識の中では叫んでいるのですが、自分の耳に届くのはかすれた声と呼吸音だけでした。
金縛り、という知識はあったものの自分の身に起こっていることが金縛りとは思えず、なんとか必死に抵抗をしていたのですが、何も叶わず結局はこちらが眠気に負けて意識が飛ぶまで身体も動かせず、声も出せない状況でした。
そして起きると通常通り、電気もテレビも点いていて身体も自由に動かせる状態に戻っていました。
金縛りを経験して以降、実家で何度か金縛りにあうことが増えましたが、いわゆる「霊的なもの」が見えたこともなく、恐怖を感じることもなかったのでお祓いを受けるわけでもなく、そのままにしておきました。
月日は流れて社会人になり、趣味の一人旅で北陸地方に出かけたときです。
目的地に着いて、予約をしてあった駅前の観光客向けのホテルにチェックインしたときのことです。
ルームキーをもらって部屋に入ると、というか入った瞬間に寒気を感じました。
季節は5月。春先ならまだしも大型連休に近い日程だったので、寒気を感じるほどの気温になることは無く、しかも空調設備が管理されている屋内だったので「変だな」と思いながらも部屋へ歩を進めました。
客室内はシンプルな作りで、ベッドとテレビが置かれた簡素な造りでした。
ただその部屋にそぐわない大きな絵が額縁に入れて飾ってあったことが気になりましたが、
観光客向けのホテルなので、それらしい雰囲気作りのためにお設置してあるのだろうと気にせず、荷ほどきを始めそのままホテルの大浴場へ向かい、一日の疲れを落として部屋に戻り早々にベッドへと入り寝る準備をしました。
ベッドの具合も悪くは無く、翌日も朝早くから観光ルートを回る予定をしていたため、早めに寝付くことができました。
眠ってからどれだけの時間が経ったのかはわかりませんが、夜中にふと目が覚めました。
これもまた覚めた、というより意識だけが起きている状態です。
なんとなく慣れてきてしまっていたので「あぁ、また金縛りか」と思いながら、抵抗せずにただひたすらに自分が再度寝落ちしてしまうのを待ちました。
ところが、今回ばかりは状況が違いました。
急に自分の視点が変わったのです。身体は動かせないのですが意識だけが身体を飛び出している感覚になり、見えたものは自分が寝ているベッドの下の映像でした。
急に見えた視界にわけがわからす、そのまま自分の頭に流れてくる映像を強制的に魅せられていると、ベッドの下に「なにか居る」のがわかりました。
「なにか」というところまではその時点で明確には分からなかったのですが、そのまま見ていると動いているのが分かり「生き物」ということが分かりました。
なんでこんなところに生き物が?でもこれがリアルタイムの映像とは限らないし。そもそも私は今身体を動かせないから、この映像はどこでどうやって見られているもの?と色んな考えが頭を巡りました。
そうこうしているうちに、ベッド下の「生き物」と目が合った気がしました。
金縛りに合っているのにさらに背筋が凍りつく感覚に襲われ、そこで初めて本能的に「やばい」と感じるようになりました。
目の粗いカーペットを這いずるような音が聞こえたと思ったら、ベッドの下からその生き物が這い出してくるのが分かりました。
生き物の一部がベッド下から見えた途端に、身体の硬直がさらに強くなりました。
ベッドから這いだしているのは明らかに人間の手だったからです。
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