お祓いなしで井戸を埋めると……

　井戸を解体するというのは最近ではほとんど聞かない話ですよね。しかし、2、30年くらい前までは時々あるお話で、古い家や駐車場なんかに井戸や井戸の跡があったりしたそうです。ともあれ、井戸を解体する時はお祓い、息抜き、魂抜きをするのが普通です。追加の費用が数万円ほどかかりますが、元来より井戸は「水の神様がいらっしゃる神聖な場所」とされてきたためこれをケチる人はあまりいませんでした。逆に言えば、その数万円をケチって利益確保に走る人もいたのです。しかし、そういう人たちは……。

　その実例を1つ紹介します。父親の故郷に土地を買ったとある一家は、井戸をお祓いなしで埋めて立派な家を建て、モダンでゴージャスな庭も作らせました。その一家の父親はバブルの波に乗って建設会社で成功しており、とても裕福な生活をしていました。その人はコンピューターのように現実的である意味冷淡な考え方をする人で、お祓いや厄年などのオカルトは信じないと言っていたそうです。ところが。井戸を埋めて半年後に、息子の一人が事故に遭って入院したり、母親が体調を崩したりということが起こりました。しかしこれはまだ序の口。他にもいろいろあったようなのですが、結局のところその一家はバブル崩壊による手酷い失敗により破産、心中という結末に至ったそうです。

　ちなみに大きな公園の近くにあり恵まれた環境にあったその豪邸は、地元で長らく心霊スポットとしてそれなりに有名な存在でした。どういうわけか、女の霊だけが多く観測されていたようです。今ではもう取り壊されていますが、伝統というものは蔑ろにしない方がいいものですね……。