手招きする黒い老婆

「子供はそういうモノを見つけやすい、もう山の近くで遊ぶのは止めなさい」と祖母に言われてから、
私も友達も山のふもとでは遊ばなくなりました。
もし、あの時手招きする黒い影について行ってしまっていたらどうなっていたのだろうと
大人になった今でも考えると怖くて仕方ありません。

余談ですが、あの時私と一緒に黒い影を見て異様だと感じた子は、遠いご先祖様にイタコがいたのだと後から知りました。
イタコは修行をして霊を感じることが出来る人たちだと聞いていましたが、その子はその血のおかげであの黒い影を見て

近づいてはいけないと思ったのかもしれません。

私がどうしてあの黒い影を見てその子と同じような感覚になったのかは分かりません。
祖母から聞いたから意味もなく怖くなったのか、もしくは私のご先祖様にもそういった存在がいたのか…。

今でも山に入るのは苦手です。あの山じゃないとしても、どうしても身が竦んでしまうのです。
もちろん、地元に戻った時は絶対にあの山には近づきません。
もう大人ですが、いつあの黒い老婆の影に手招きされるか分かりませんからね…。