手招きする黒い老婆
投稿者:こんにちは (1)
祖母は私に昔話をしてくれた時、山で手招きする老人について行ってはいけない、
もしついて行ったら恐ろしい場所に連れて行かれ、二度と戻れなくなる…と聞かされていたので、
ついて行かなくて良かったと安堵しました。
ですが、恐怖はまだ終わってはいませんでした。
突然私たちの耳に複数の囁くような声が聞こえてきたのです。
何を言ってるのか最初は分かりませんでしたが、注意深く聞いていると
「こっちにおいで」、「置いて行かないで…」と言っているのが分かり、
その場にいた全員が悲鳴を上げました。
姥捨て山に捨てられて亡くなった人たちが私たちを呼んでいる、置いて行かないでと
恨んでいる…そう思いました。
私たちが捨てたんじゃない…そう心の中で思いましたが、今にして思えば私も友達も姥捨て山に
捨てられた人々の子孫…亡くなった人たちにとっては恨むべき対象だったのかもしれません。
私たちは必死にお互いの手を握り合い、離れないようにしました。
「手を離したら連れて行かれるかもしれない!」、「絶対に離しちゃダメだよ!」と
みんなで言い合いました。
それから数時間後…みんなで身を寄せ合い手を握りしめながら震える私たちを探しに来た親たちが見つけ、保護してくれました。
親たちは私たちを叱りつけようとしましたが、私たちの様子が異様だと思ったのか、慌てて山を下りて温かい食事を
食べさせてくれました。
「何があったんだ?そんなに怯えて…」と聞いてきた私の両親に、私はうまく説明することが出来ませんでしたが、
何とか黒いおばあさんが手招きしていたことを伝えました。
すると、両親は怪訝な顔をしましたが、何か思ったのか優しく頭を撫でた後、もう子供たちだけで山に行ってはいけないよと
言って話を終わらせてくれました。
他の友達の親たちも似たような反応をしていたので、何かを感じ取って必要以上に怒らないようにしてくれたのだと思います。
私はあの場所にずっといるなんて考えるだけで恐ろしかったので、大人たちが探しに来てくれて本当に良かったとホッとしました。
翌日、私は黒い影のことを祖母に話しました。
祖母は目を見開いて驚き、「よく無事だった。ついて行かなくて良かった…」と涙しました。
聞けば、祖母も昔私と同じ目に合い、その時は友達が1人行方不明になってしまったそうです。
大人たちが総出で山を探したそうですが、その子は見つからず…。
かろうじてその子のサンダルが一足見つかったそうですが、そのサンダルには人の手と思われる黒い手形が
ついていて、発見した大人たちは恐れおののいたそうです。
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