後ろの頭陀袋
投稿者:きな粉もち (3)
長編
2022/08/03
01:34
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彼は身支度をして、帰るまでのあいだ、
ここの土地柄について語ってくれました。
世界恐慌によって失業者が続出した当時、
仕事を割り当てるための
国家政策のひとつとして開かれた土地が、
ここなんだとか。
でも、労働環境が過酷だったからか、
それとも貧困に喘いでたからなのか、
亡くなった方がたくさんいらっしゃったそうです。そのうちの一人があのトンネルの首無鳴子(くびなしなるこ)と呼ばれている幽霊だそうで、
首のない、ぺたぺたと足を鳴らす、
といった特徴からこの名前になったようです。
改修工事が重ねられてトンネルは
何度も生まれ変わっているのですが中には
いまだに霊が残されているそう。
彼には首無鳴子に追いつかれなかったか、
執拗に尋ねられました。
追いつかれたものは災いが
降りかかるのだとか。
あまりの剣幕に少し怯んでしまい
最初は口を噤んでしまいましたが、
勇気をだして僕の方から
和尚さんに切り出します。
「実は…」
出口に落ちていた頭陀袋のことを話すと
彼はさっきまでの険しい表情から一転、
おだやかな表情になります。
「そうですか…」
それっきり彼はなにも言わないままで、
現場の近くにくるまでその状態が続きました。
「それでは僕はここら辺で。
今日は本当にありがとうございました。」
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最後に何が起こったのか最後までぞくぞくするお話