親子の声
投稿者:八尺マン (46)
いや、普通の人間の声じゃない
「私だって嫌なんだよ! 黙って我慢しろよ!!」
次に聞こえてきた声は、さっきまでの女性の声とは遠くかけ離れた声だった
しゃがれた男の声だった
口調も乱暴なものに変わっていた
俺はもう目を開けることが出来なくなっていた
隣にいるのは明らかに普通じゃない、おかしな存在がいる
それから二人の罵倒のやり合いが始まった
子供の方も乱暴な口調になっていた
「てめぇのせいでこんなことになったんだろうがよ! なめんてんのかよぉ!!」
まるで893な人の話し方だった
もはや子供とは言えず、子供だった何かと表現した方がよかった
俺はどうか早くこいつらが降りてくれ、と祈るだけだった
「・・・ねぇ。このおじさん、僕たちに気付いてない?」
急に子供だった何かがそんなことを言い出した
声は最初の子供の声に戻っていた
俺は身体がビクッと動き出しそうになるのをどうにか堪えた
「やめなさいよ。私たちの姿が誰かに見えるわけないでしょ?」
こちらも最初のお母さんの声に戻っていた。
だが、怖いという感情が今更消えるわけはなかった
マズイ
非常にマズイ
俺が本当は起きていて二人のやりとりを聞いていたことがバレたらどうなるか
俺はじっと眠っているふりをし続けた
やれることはそれだけだった
「んー。そうかなー?」
こっちに動いてくる気配がする
マズイマズイマズイ
俺は心臓をバクバクさせながら、必死で動かないようにしていた
成仏できずにさまよい死ね瞬間を永遠にループする、そんな空間にあなたもひきずりこまれてしまっていたかもしれませんね。