バイト先のビルの怪
投稿者:足が太い (69)
後ろを向いて、そこに見えたのは何と言い表せばいいのかわからない、奇怪な化け物でした。
体は1つだけですが、頭は2つあるのです。
1つは男性の顔、もう1つの顔は女性でした。
その2つの顔が同時にニタニタと笑い出し、「こっち見た」「見たね」「終わりだ」「おしまいだ」と話し始めました。
その時になって初めて気づいたのですが、男性の顔と女性の顔に見覚えがありました。
私のバイト先の同僚です。
「本田さん(仮名)と山崎さん(仮名)…?何で…」
私が恐る恐るつぶやくと、本田さんと山崎さんの顔をした化け物は、一層笑みを深め、こちらに近づいてきました。
あまりの恐怖に声が出ず体も動かず、もうあと数cmで腕を掴まれると思ったその時、階下から「そこに誰かいるんですか?」と声が聞こえたのです。
その瞬間、本田さんと山崎さんの顔をした化け物は消えてしまいました。
慌てて階下を見ると、警備員の制服を着た男性が立っていたのです。
警備員さんから「危ないので夜は非常階段使わないようにしてください」と注意されても、先程の衝撃に曖昧な返事しか出来ませんでした。
警備員さんは変な顔をしましたが、仕事中だったからかすぐに下の階まで行ってしまいました。
私も、いつまでもここにいたらまたあの化け物が出てくるかもしれないと思い、慌てて下に降りていったのです。
不思議なことに、そのあとは普通に1階まで辿り着くことが出来ました。
翌日・翌々日はバイトが休みだったのですが、あんなことがあったので出勤するのが怖くなり、休み中に電話で辞めることを伝えました。
急な退職だったのでかなりしつこく引き止められましたが、怖くて出勤出来ないので私も必死に断り続け、辞めることが出来ました。
その後、私の前に辞めた元同僚にそれとなくあの夜起きたことを話すと、「本田さんと山崎さんって誰?」と、言われたのです。
他の同僚ともLINEがつながっていたので本田さんと山崎さんについて軽く話しを出したのですが、皆「それって誰?」と返してきました。
確かにバイト先には本田さんと山崎さんが存在していたはずなのですが…、それじゃあ一体、あの2人は何者だったのでしょうか。
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