曲がり角から見える白い手は
投稿者:足が太い (69)
私が10歳か11歳頃のこと。
1人で学校から帰っていると、曲がり角のところから手だけが出ているのに気づきました。
白く細い、恐らく女性の手だと思いますが、それがゆっくり上下にひらひらと動いているのです。
夕方だったので人通りはそこそこありましたが、周りを歩いている人達の中に、おいでおいでをしている手に気づいた人はいないようでした。
ちょっと怖かったのですが、私はその手の先にどんな人がいるのか気になって、ふらふらと手の方へと歩いていったのです。
その間も白い手はずぅっと、おいでおいでをしています。
あともうちょっとで曲がり角を曲がって、そうしたら手の正体が分かる…。
というとき、グイッと後ろに腕を引かれて止められてしまいました。
びっくりして後ろを向くと、知らないおばさんが怖い顔をして立っています。
一瞬私を睨んでいるのかと思ったのですが、視線の先を追っていくと、どうやらおばさんは手を睨んでいるようなのです。
おばさんが黙って手をじっと見つめていると、手はピタリと止まり、スーッとその場から消えてしまいました。
いつの間にか息をつめていた私は、はぁーっと大きく深呼吸してから、おばさんに「あの…」と話しかけました。
おばさんは私を見て、「あれはね、本当に怖いものだから、ついてっちゃだめだよ」とだけ言って、その場から去っていったのです。
今、大人になって思い出すと、あの白い手は幽霊か何かだったのでしょう。
おいでおいでをして生きている人間を誘い、一体どこへ連れていくつもりだったのでしょうか…。
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