幽体離脱と臍の緒のような紐
投稿者:こぶし (8)
短編
2022/06/26
01:08
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病気で服薬していた時なんですが、副作用で一日のほとんどを寝て過ごした時期がありました。
起きているのか寝ているのかあやふやな状態が続いていたある日、外に出かけたいな、と何となく思いました。
すると、体がふわっと浮き上がったのです。振り返ると、自分の身体が布団に寝ているのが見えました。
幽体離脱のことは知識として知っていたので、怖いながらもワクワクして、このまま外に出てみようと思いました。
ですが、玄関のドアを通り抜けようとした時、何かにぐいっと引っ張られました。
おへそのあたりから紐が出ていて、私の寝ている身体と繋がっており、それがこれ以上伸びない感覚です。まるで臍の緒のようだと思ったことを、よく覚えています。
結局それ以上先に進むことができず、踏ん張り続けることもできず、限界まで伸ばされたゴムがパチンと戻るように、私は身体に引き戻されました。
もしかしたら、この臍の緒のような紐が切れてしまったら、身体に戻ることはできなくなるのかもしれないと感じました。
自然と切れる時が訪れるのか、あるいは出産時のように他者に切られることもあるのか、考えると怖くなりました。それが死ぬということだと思えたからです。
当時まだ自分が身体と繋がっていて、本当に良かったと思いました。
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