バスに乗った時の話
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
短編
2022/06/20
03:24
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ピンポーン
またベルが鳴った。
さっきと同じようにバス停で止まってドアが開いた。
しかし、また誰も降りようとしない。
こんな事もあるのかなあと思っていると、ドアが閉まってバスは走り出した。
ピンポーン
またバスが止まり、ドアが開いたが、やはり誰も降りなかった。
さっきと同じように何事も無かったようにバスは走り出した。
ピンポーン
4回目となると、僕が悪戯でボタンを押したと運転手が思ってるかもしれないので、思わず
「ぼ、僕じゃないですよ!」
と言うと、運転手は落ち着いた声で
「ええ、わかってますよ。」
僕の様子を見ていたのか、そう答えるだけだった。
運転手は僕の動揺した声を聞いて、僕を安心させようとしたのか、続けて
「時々ボタンの調子が急に悪くなることがあるんですよね…。」
「そ、そうなんですか…。」
僕はそう言うしかなかった。
そういえば、後ろに座っている乗客はどうしているんだ?と思い後ろを振り返った。
僕はその目を疑った。
客は僕一人だけで、他には誰一人乗ってなかったのだ。
え?
じゃあさっきの話し声って何なんだ…?
後ろを振り向いたまま身動きが取れずにいるとバスは駅に着いた。
それを理解できないままバスを下りようとして運転手の横を通った時、運転手は僕にこう言った。
「お客さん、ああいうのは気にしたらダメですよ。」
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