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ぴさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

守り神「村上さん」
長編 2022/06/09 21:02 8,241view
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次第に水不足になって、それで村で大々的に雨ごいが行われたのです。

その雨ごいに参加したのが村上さんと仲良くなった村人の家族でした。

けれどそれでも雨は降らず、作物は育たずにダメになり、だんだんと村人たちの気力もなくなっていきました。

それで一つの案が浮かんできたのです。

それが「生贄を捧げて雨を降らそう」という最悪なものでした。

生贄に選ばれたのは一人の村人でした。

生贄はなるべく若いほういいということで、最初の雨ごいに参加した家族の娘が選ばれたのです。

選ばれたのは村上さんと仲良くしていた家族の娘で、一人娘へのむごい仕打ちにそれからその一家は酷く塞ぎ込んだのです。

けれど当初の予定通り、その娘が生贄になることはありませんでした。

なぜならその家族の代わりに身代わりになる人物が自ら名乗り出たからです。

よそ者だった村上さんの娘は優しくしてくれた唯一の家族に恩を感じ、そして身代わりに生贄になったのです。

村上さんの娘が生贄になった日の翌日、3日3晩雨は降り続き、村は日照りから解放されて再び元気を取り戻したのでした。

ここまで一息に話した実習生の先生は、私たち一人一人を見回しました。

突然始まった怖い話に、教室は重苦しい空気になっていました。

そして「そう、この村は生贄になった村上さんに守ってもらったんですね」と実習生はにこやかに言ったのです。

私たちはただの守り神と信じて疑わなかった村上さんがそんな存在だとは知らなくて、驚きと不安に襲われていました。

都合よく守り神と呼ばれて親しまされている村上さんがまさかそんな存在だとはこれまで聞かされたことがなく、知らなったのです。

実習生の話はまだ続きました。

それから村上さんの一族は一転して、村で神様のように扱われるようになりました。

本人たちがそれを望んでいたわけでもないのに関わらず…です。

そして特別な扱いを受けると同時に、村に何かがあるとその一族の人間が生贄に差し出されるようになったそうです。そ

れから村から飢餓や伝染病などの被害はなくなりましたが、代わりに生贄の風習が残ったそうです。

それは長く長く続き、そして村上さんは守り神になったと聞きました。

あまりにダークすぎる話に、クラスでは泣き出してしまう子もちらほらいました。私も顔が引きつっていたと思います。

今思うと小学4年生に聞かせる話じゃなかったように思います。

実習生は「では、村上さん一族はその後どうなったと思いますか?これを宿題にします。」と話とはあまりに温度差のある明るい声で言いました。

そしてクラス全員にプリントを配って、重苦しい雰囲気に包まれた教室を去っていったのです。

小学4年生の頃の記憶なんてほとんどおぼろげですが、この日の授業のことだけはよく覚えています。

それだけインパクトのある授業で、あの恐ろしい村上さんの真実の話は今も忘れられません。

その後学校で何があったのか分かりませんが、実習生はその日以来、学校には一度も現れませんでした。

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