守り神「村上さん」
投稿者:ぴ (414)
私の地元では、昔から「村上さん」という守り神の存在がありました。
守り神といっても形あるものではなく、何かいいことがあると「村上さんのおかげ」と言ったり、逆に悪いことをすると「村上さんが見てるよ」なんて言うのです。
小さい頃からそう言われて育ってきたので、それに対して何の疑問もありませんでした。
おそらくうちの両親もそうだったんじゃないかと思います。村上さんという守り神がいることは分かっていましたが、正直村上さんが何の神様なのかはよく分からなかったのです。
ただ守り神ということは、教えられました。
そんなある日に私は村上さんがどのような存在なのかを知ることになるのです。
あれは私が小学4年生の道徳の時間だったと思います。
当時実習生として学校に来ていた先生がいました。
普通は実習生が授業をして、担任やほかの先生が見学するという形になると思うのですが、その日はなぜか担任がいなかったのです。
確か病欠とか用事があっての欠席だったかと思います。
とにかく、その日はなぜか実習生一人で私たちに授業をすることになりました。道徳の時間ということで、私を含めた生徒たちは何をするのかとわくわくしていたのです。
みんなでゲームをしたり、何かビデオを見たりするのかと思っていました。
だけどその日は違っていたのです。
まず最初に実習生の先生が話したのは、本当に簡単な自己紹介です。
先生の名前は「美香」と名乗りました。
そして私たち生徒ににこっと微笑んだのです。見た目はとても若くて、優しそうな人でした。
長い髪をまとめて大きな蝶々の髪飾りでとめていて、その髪留めが私の中で印象的です。
その先生はまず最初に私たちに「みなさん、村上さんって知っていますか?」と尋ねてきたのです。
私は守り神である村上さんのことは当然のように両親から教えてもらって知っていました。
クラスのほとんどの子も知っているようで、「知ってる」とみんな答えていました。
でも中にはなぜか村上さんを知らない子もいて、「村上さんって何?」と聞いていました。
そこで一度ざわざわしたのですが、次の瞬間先生が「じゃあ村上さんの話をしましょう」と私たちに、唐突に村上さんの話を始めたのです。
先生の話は、最初から怖いものでした。
ある村に村上さんという人がやってきました。
30代くらいの男女とその娘たちの4人家族でした。
町の外からやってきたせいで、村人はその人たちにとても冷たかったそうです。
外からきたよそ者に村人はとても警戒心を持っていて、そのせいなのか村上さんはなかなか村人たちに馴染めずにいました。
ところがあるときに、村人の内一組の家族が村上さん家族と仲良くするようになりました。
その村人がとてもいい人たちで、村上さんはその村人と次第に仲良くなっていきました。
当時は日照りが続き、雨がなかなか降らない日が続きました。
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