魂がこもった人形
投稿者:ぴ (414)
おそるおそる私はその布団をめくりました。そしたらあの人形が布団の中に潜り込んでいたのです。
私はあまりの恐怖で、腰を抜かすかと思いました。
しかし、それだけでは終わりませんでした。
人形の目と口が突然カッと開いて、「パパ」と言ったのです。
「パパァ、タタカナイデ、イタイ、イタイ、ヤメテェ、ヤメテェ」それは苦しそうな子供の声でした。
「イジメナイデ、コワイ、コワイ」と人形のあまりの悲痛な声に私は必死で母を起こしました。
けれどまるで眠り薬でも飲んでいるのかのごとく、母は起きません。
あまりの恐怖に気絶しそうになりながら、恐怖と闘いながら再び人形を見ました。
そのときの人形の顔は今思い出しても寒気がします。
せっかくの綺麗な容貌が見るも無残に崩れて、目玉が飛び出て苦痛に苦しみ抜いている顔でした。
「ソノコ、モ、イタイ、クルシイ、ヤメテ」と人形は最後に言ったのです。
私はその日の朝、母に起こされて目が覚めました。
起きた瞬間母に泣きついて、わんわん泣きながら昨夜の人形の話をしたのです。
妹が昨日と同じように人形を抱きしめていて近寄ってきたので、「やだー」と母に縋って余計に泣きました。
両親は私の話をすべて鵜呑みにして、人形がしゃべったことを信じたわけではないと思います。
私が妹と離れるのを嫌がったと思って、養子の話をきっぱりお断りました。
それ以降、私たちは親せきの集まりに参加することをやめました。
だからあれから親戚のおじさんとは二度と会っていません。
ただあの日の異様さと震えるほどの恐怖心は今も忘れることはありません。
後で聞いた話ですが、あの人形はおじさんの娘が一番大切にしていた人形みたいです。
また真偽は定かではありませんが、娘と一緒に棺に入れられて燃やされたはずと聞きました。
人形は大事にしていると魂が宿ると聞いたことがありますが、一体あれは誰の魂だったのでしょうか。
振り返って思うのは、あの人形のおかげで妹はおじさんに養子に出されずに済みました。
もし妹が養子に出されていたら幸せになれたのでしょうか。
暴力に怖がっていたあの人形の恐怖の顔は今もリアルに脳裏に思い浮かびます。
おじさんの娘の死因は病気だったはずです。
だけど、本当にそうだったのかと今も思い出しては、身の毛がよだちます。
もう真相を探る手立てはないので、どうしようもないのが悲しいです。
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