「クローゼットは?」
僕がそう訊ねれば、父は再び表情を引き締めて片側が開いたままのクローゼットへ向き直ります。
片手でドライバットを構え、もう片方の手で閉じた方の扉を思い切り開くと、父は「おりゃああ」と高らかに気合を入れるように叫びドライバットを振りかざしました。
父の気迫に息を呑む僕と母でしたが、すぐに父はだらりと振り上げた腕を下ろして僕達の方を向いて、再び「誰もいないよ」と落ち着いた声で言います。
誰も居ないのは良い事なのですが、だったらさっき僕が見たありえない程口を大きく開いた子供はなんだったのかと、別の恐怖心が込み上げてきました。
実在しないとすれば自ずと答えは霊的なものに絞られるのですが、父は「今日は父さん達と一緒に寝よう」と僕の肩に手を置いて、まるで部屋に立ち入らないように一階に誘導するのです。
釈然としないものの、この晩、僕は両親に挟まれる形で一緒に就寝しました。
後日、僕は学校でA君B君C君に昨晩の体験を話したところ、皆も似たような体験をしたと言って来たので驚いて顔を見合わせました。
A君は机の下を覗いたら。
B君はベッドの下を覗いたら。
C君はロフトから覗くように見下ろしてきたと話します。
そして、共通するのが何れも顔の面積の半分近く口を大きく開いた子供のような背丈の人物だと言うのです。
更に驚くことに、全員がD君家で感じた押し入れの違和感について思い出していたようで、この一連の現象はD君のせいではないかと疑惑の目が向けられました。
しかし、不思議な事にいざD君の事を思い出そうとすれば、D君がどんな顔をしてどんな髪型だったのか一切の情報を思い出せず、代わりに口を大きく開けた子供の顔を鮮明に思い出してしまうといった悪循環に嵌り、揃って渋い顔になるのです。
その後は結局D君の事は思い出せずに終わり、僕達4人は小学校を卒業して次第に疎遠になるのですが、大人になった今でも時折口を大きく開けた子供を見かける事があります。
それは夜勤の職場や帰り道の物影から僕を覗くように見ていて、これといって何をしてくる訳でもないので無視していると気づいたら消えてしまいます。
一番怖かったのは自宅の風呂場の引き戸の擦りガラスにシルエットが映り、顔を貼り付けていた時でしょうか。
あの時は怖くて大人ながら漏らしてしまった記憶があります。
子供は直接何もしてこないものの、正直見かける度に驚くので心臓の負担が深刻です。
そのせいか、偶にD君の顔を思い出せばあの子供から解放されるのではないかと考えた事もありますが、どうやっても思い出せないので諦める事にしました。
一体D君とは何者だったのでしょうか。
どうして突然引っ越したのでしょうか。
何も分からないまま、もしかしたら僕は一生あの子供に付き纏われるのかもしれません。


























結局なんだったんだ…不気味だ
顔が思い出せないなんて・・・・
ためはち
うわー不気味で夜しか眠れない
怖い…のか?
意外に怖いんだけど