その日、彼女はやはり相手の男の呼び出しに応じるために、僕が眠りについてから静かにアパートを抜け出した。
男が指定する場所に行ってはみたが、待てど暮らせど肝心の本人が来ない。
電話を掛けたり、メッセージを送ってみても何の返信もなかったために、一度アパートに帰って男からの連絡を待とうと思ったという。
部屋の中は特に変わった様子もなく、ベッドの中で静かに寝息を立てている僕を起こさないようにと、そっと隣で寝たそうだ。
男からの連絡にすぐに対応できるようにと、ずっと気を張っていたそうだが、仕事の疲れもあっていつしかうとうとしてしまったらしい。
その時にキッチンの方からガッシャン!と大きな音が聞こえたそうだ。
何事かと明かりを点けてキッチンを確認してみると、シンクの中に血だらけの包丁があったという。
彼女は怖くなり、混乱しながらも僕を起こそうと寝室に戻ると、目を半開きにして血でぐっしょりと溺れた僕が、ベッドの中で意識を失っていたということだった。
その後は刑事たちから聞かされた話と大して違いはなかったが、決定的な証拠の少なさや杜撰な捜査の矛盾、
警察から聞かされた証言の食い違いなどから彼女は申し訳なさそうに、私は犯人は浮気相手の男とはどうしても思えない…と呟いた。
男は小心者で、殺意をもって人を殺そうとするほど大胆なことが出来る人間じゃないと…。
「それに…」
「それに?」
言葉を詰まらせた彼女に話を促す。
「これは今まで誰にも言ってなかったんだ…。もちろん警察の人にも。
あの日、あなたを乗せた救急車に乗り込もうとしたとき、人だかりの中にあなたの姿があったの…。
一瞬、他人の空似かと思ったんだけど、近所でそんな人見たことないし、聞いたこともなかった。
それに、髪型や服装までまるっきり同じで…血まみれのあなたを見てずっと笑っていたの…。
笑い方までそっくりで。」
僕は彼女の話を聞いて、背筋が凍り付いた。
彼女は続ける。

























素晴らしい❗
おいおいおい・・・
ためはち