盆踊りにいた知らない子
投稿者:ぴ (414)
そしたら祖母が「山下さん家のさとこちゃん」と教えてくれました。
さとこちゃんと言われても全然ピンと来なかったです。
初めて聞いた名前で、不思議に思いました。
しかも、ここらへんの子はみんな知らなくて、それも不思議。
近くに住んでいる子なら遊んだことがあるはずだし、知っているはずなのです。
祖母はそんな訝し気に首を傾ける私にさとこちゃんを紹介してくれました。
何でも体が弱くて、ずっと入院生活だったらしいです。体調が改善して来たと言っていました。
私は理由がわかりすごくすっきりしました。いつも入院していないから知らないと思ったからです。
さとこちゃんはすごくおとなしい子でした。私のほかにもさとこちゃんに声をかける子はたくさんいたけど、すぐには打ち解けられないようでした。
みんなはすぐに諦めて、盆踊りをほかの子たちと踊っていましたが、私はさとこちゃんがなぜか気になってならなかったです。
だから私は自分が大事にしているビー玉をあげて、「私の宝物あげる」とさとこちゃんに仲良くなりたいアピールをしてみたのです。
最初は警戒していたようですが、ビー玉効果なのかさとこちゃんは私にちょっと心を開いてくれました。
そして、「くれたビー玉のおかえし」と言って、私に真っ黒なビー玉をくれたのです。
楽しい盆踊りを終えて、私たちは集落の人たち全員と山を降りました。
私はさとこちゃんとさとこちゃんのお母さんと最後尾を歩いていました。
途中でさとこちゃんのお母さんが「じゃあ私たちはこれで」と山を降りきる前に手を振りました。
私は「え?」と思いました。
だって、盆踊りの小屋は山の奥で、麓まで降りきらないと家なんてなかったはずです。
明らかにそこには墓地しかなくて、私はすごく首を傾げました。
だから「どこに帰るの?」とさとこちゃんに聞きました。
「この先が家だけど、寄っていく?」とさとこちゃんは私に笑顔いっぱいで尋ねました。
強い力で手を引かれて、そちらについて行こうとしたのです。
でもそこで、前から祖父に名前を呼ばれ、少し悩んで私は祖父が心配しているのと、お墓が怖いので「今日は帰る」というと、さとこちゃんはすごく寂しそうに手を振りました。
私はさとこちゃんにもらったビー玉を見せながらバイバイし、さとこちゃんは私があげたビー玉を大事そうに握っていました。
私は次に祖父母の家に来たときに、さとこちゃんが入院しているという病院を聞くつもりでした。
私はあの盆踊りの日に出会ったさとこちゃんのことが気にかかっていたのです。
それなのに次に会ったときに、祖母に「さとこちゃんはどこの病院にいるの?」と聞いた私はその答えに驚きました。
祖母は私に「さとこちゃんって?」と聞き返したからです。
先日盆踊りで私は祖母にさとこちゃんを紹介されました。なのに、祖母は「知らない」というのです。
さらに不思議なのは、私と一緒に盆踊りに行った近所の子たちに聞いてみたけど、誰一人としてさとこちゃんのことを覚えていませんでした。
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