正体不明の犯人
投稿者:ぴ (414)
私がそのことに気づいたのは、一通の手紙からでした。
その手紙が届くまでは特に何の変わりもなかったのです。普通に会社に通い、普通に彼氏がいて、普通に生活する凡庸な人間でした。あの時までは…。
私はそのとき、彼氏の家で同棲していました。
彼は古い一軒家を知人から借りており、付き合って間もなく私がそこに一緒に住み始めました。
彼と付き合い始めたのは友人からの紹介がきっかけで、私も年齢が年齢だったので、結婚を前提にお付き合いしていました。
そのため、付き合って間もなく、私と彼は同棲するようになったのです。
結婚してやっていけるのか、お互いにお試ししてみようというつもりで、一緒に暮らし始めたのでした。
暮らし初めて数か月は特に何事もなく、過ごしていました。
私も彼のことを好きだったし、おそらく彼も私のことを好意的に思ってくれていたと思います。
特に暮らしていて彼に問題があるとは思わなかったし、彼と一緒に暮らすことへの不満はありませんでした。
ただ、一つだけのネックがこの家だったのです。
彼が借りていた家は借り物なだけにかなり古くて、いろいろと戸惑うことばかりでした。
トイレは水洗トイレなのですが、ひと昔古い型の水洗トイレでカバーしないと冷たくて座れません。
全体的に部屋も古くって、いろいろと工事が必要に見えました。
さらに個人的に一番問題だったのがお風呂です。
お風呂がすごく古くって、それまで住んでいた新しいタイプの浴室とは全然違いました。
四角いタイプの従来のお風呂になっており、新しい足を伸ばせるお風呂に慣れた私には少々居心地が悪かったです。
私は慣れるまでに結構時間がかかると思いました。換気のために窓がついているのですが、その窓も小さいし木の枠で古いし、ちょっと触るのも嫌でした。
けれど人間慣れるもので、数か月ほど暮らしていたら、特にそれも気にならなくなりました。
もともと図太いタイプだといわれるので、それも良かったのかもしれないです。
そんなわけで、トラブルもなく過ごしていたのですが、ある日ポストに届いていた一通の手紙を読んで、私はぎょっとすることになりました。
その手紙の冒頭には、「覗かれてますよ」と書かれていたのです。
誰がポストに投函した手紙なのか分かりません。
ただその手紙には、はっきりと「お風呂を覗かれている」というような内容が書いてあったのです。
彼の家は換気のための小さな窓があり、その場所が外からは見えにくい場所にあったため、わざと換気のために少し開けて入ることが多かったです。
彼がいるときは一緒に入るときもありましたが、仕事上彼の帰りが遅いので、私だけ先に入ることが多かったのです。
だから覗かれていると知って、かなりぞっとしました。
そのことを彼に相談したら、最初は猛烈に怒ってくれましたし、この手紙を誰が書いたのかということもすごく気にしてくれました。
お互いに気を付けようということになり、それから私はなるべく換気用の窓を開けないで入るようになりました。
しばらくは何もなかったので、もしやあの手紙は誰かのいたずらじゃないかと思い始めました。
めちゃくちゃ怖かったけど結局ヒトコワではない……?