「じゃあ、もっとあなたに、あたしを好きになってもらおうかな!」
「え?」
彼女はすくっと立ち上がると、壁の前に歩み寄りました。
壁にはカーテンが張られています。
ですが、カーテンが張られているのは、道路に面した窓のある壁ではなく、
家屋の内側に面する壁なのです。
「見ててね〜見ててね〜」
無邪気に彼女は、いたずらっ子のような笑みを私に向けます。
彼女はカーテンを、シャーッと両端に広げました。
その光景に、私は呼吸を止めてしまいました。
そのカーテンの奥、その壁一面には、
ポラロイド写真が、びっしりと張られていました。
二、三百枚はあろうかという、おびただしい数の、怯えた表情をした老若男女の写真・・・
「ねえねえ」
彼女は私に呼びかけました。
数秒遅れて、彼女に振り向きます。
パシャっという軽い音と共にフラッシュが焚かれました。
「あは。やっぱりいい顔してる。」
カメラから、ポラロイド写真が排出されます。
その私は、他の写真の人のように、怯えた顔をしていました。
「これは特別な一枚ね。」
そう言うと彼女は、
私の怯えた顔を閉じ込めたその写真に、
あつく頬擦りをして、
それから、
その写真をゴミ箱に投げ捨てました。
「でも、まだいらないものね。あは。」
彼女は私に微笑みます。
「あなたのことが、心から愛(いと)しいのよ・・・」
その顔は本当に美しく、そして、狂気でした。
・・・それからしばらくして、
季節は春風が桜を薫らせるころ、
























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