いとしのカノジョ
投稿者:バクシマ (40)
「じゃあ、もっとあなたに、あたしを好きになってもらおうかな!」
「え?」
彼女はすくっと立ち上がると、壁の前に歩み寄りました。
壁にはカーテンが張られています。
ですが、カーテンが張られているのは、道路に面した窓のある壁ではなく、
家屋の内側に面する壁なのです。
「見ててね〜見ててね〜」
無邪気に彼女は、いたずらっ子のような笑みを私に向けます。
彼女はカーテンを、シャーッと両端に広げました。
その光景に、私は呼吸を止めてしまいました。
そのカーテンの奥、その壁一面には、
ポラロイド写真が、びっしりと張られていました。
二、三百枚はあろうかという、おびただしい数の、怯えた表情をした老若男女の写真・・・
「ねえねえ」
彼女は私に呼びかけました。
数秒遅れて、彼女に振り向きます。
パシャっという軽い音と共にフラッシュが焚かれました。
「あは。やっぱりいい顔してる。」
カメラから、ポラロイド写真が排出されます。
その私は、他の写真の人のように、怯えた顔をしていました。
「これは特別な一枚ね。」
そう言うと彼女は、
私の怯えた顔を閉じ込めたその写真に、
あつく頬擦りをして、
それから、
その写真をゴミ箱に投げ捨てました。
「でも、まだいらないものね。あは。」
彼女は私に微笑みます。
「あなたのことが、心から愛(いと)しいのよ・・・」
その顔は本当に美しく、そして、狂気でした。
・・・それからしばらくして、
季節は春風が桜を薫らせるころ、
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