嘘と真実
投稿者:りばお (1)
「と、これが俺の体験した話。ひょっとするとあの時に見た花束が原因でついてきたのかも」
話を終えると、呆然と話を静聴していた従姉弟達は一斉に口を切り始めた。
「…………怖」
「めっちゃ怖いじゃん!!」
「いやいや嘘やろ!」
反応は上々だ。もちろん怖がらせる事が目的なので多少の脚色もするし盛ったりもする。
そう。ユメ姉が言うように、俺の話には『嘘』が練り込んである。と言っても、7割は本当の話で、俺が嘘を混ぜ込んだのは、ブレーカーを上げようと玄関へ行った後の下りからだ。
あの後、普通に電気は付いたし、当然卒倒しそうな心霊現象なんて起きていない。ブレーカーか正常だったのは不思議な事だったけれど、電気の接触が悪かったんだと思う。
初めてこの話を誰かにした時、この話は「窓の外に人影が見えた。」それだけで終わる話だった。だからドアノブが上下する下りも、郵便受けから手が伸びる下りも、その辺の怖い話から取ってつけた真っ赤な嘘である。
怖い話っていうのはそんなもんだろ?
「マサ兄の話が一番怖かったわ」
「もー寝れないやん!」
「ねー、マジで怖かった」
従姉弟がざわめいていると、
「さっきから何の話してんの?」
俺の母親が声を掛けてきた。さっきから隣部屋でキャーキャー盛り上がっていれば気になるのも当然か。
「ああ、一人暮らししてた時に俺が遭遇した怪奇現象の話しをしてた所」
何気なく俺が応える。すると母は「ああ〜」っと納得した様子で喉を鳴らす。それはどこか的を得ない反応だった。
「あんたさ、色々あってあのマンション引き払った時、お母さんが部屋を片付けたり退去手続きしたでしょ?」
「あ、ああ……そんな事もあったね」
言うが早いか、そんな反応を見せた母は俺より先に話を切り出した。あまり聞こえの良い話ではないので俺は言葉を濁す。
「それで、あんたの荷物片付けに初めて部屋に入った時ね、物凄く暗いっというか、不気味だったのよ」
それこそ5年前、当時の俺は色々な出来事(職場や学校)が重り、精神的な病を患っていた。その結果、自宅療養と言う形で実家へ戻っていたのだ。
諸々は割愛するが、とにかく慢性的に身体は重く、一人暮らしを初めて体重も10キロ以上は落ちていたんだ。
それは……慣れぬ場所での暮らしのせいだと思ってる。一人暮らしは何かをするには忙しく、何もしないには退屈すぎる。そんな虚しさがあったんだと思う。
母親は続ける。
「だからね、その不動産屋に聞いたの。なんだか部屋が全体的に不気味だけど、何か隠してる事ない? って。そしたら――――」
…………だから全ては気のせいなんだ。
かなり面白かった!
もっと評価されてもいいような気がするけど