顔が歪むおじいちゃん
投稿者:ぴ (414)
私がその話をしたら、うちの母が「お礼しなきゃ」と言って、菓子折り片手に近所のおじいちゃんにお礼をしに行ってくれたのです。
でも帰ってきた母はまるで狐に包まれたような顔をしていました。
その手には菓子折りを持ったままで、「近所のおじいちゃんに助けてもらったのよね?」と私に何度も聞いたそうです。
大きくなって母に確認した話なのですが、どうやら私がお世話になっているおじいちゃんを母は勘違いしていたらしいのです。
近所のおじいちゃんと聞いて別の人を想像していた母がその人にお礼をしに行くと、自分じゃないと言われたそうなのです。
そこから両親のおじいちゃん探しが始まりましたが、結局私を助けてくれたおじいちゃんは発見されなかったのです。
あの犬の一件以来、おじいちゃんはしばらく周りで見なくなりました。
私はそれがすごく寂しかったです。
会いたくて何度か母に頼みましたが、どのおじいちゃんなのか分からない母はとても困っていました。
子供の頃私が最後におじいちゃんに会ったのは、母と一緒にお買い物した帰り道でした。
私が家の前にいたら、私と母を見てにこにこ笑いかけるおじいちゃんが道の角で手を振っていました。
私は「あ、見つけた!」と駆けていったのですが、私が道の角にたどり着くとおじいちゃんはいなくなっていました。本当に不思議な出来事でした。
それから月日が経ち、中学生の頃に私は思わぬ場所で再びおじいちゃんを見つけることになりました。
祖母の家で古いアルバムを発見したのです。それは母が若い頃のアルバムです。
そこで見覚えのあるおじいちゃんが。そう私を助けてくれた近所のおじいちゃんににこにこした笑顔がそっくりなおじいちゃんがその写真に写っていたのです。
一緒にいた母に「顔がそっくり」と私は幼い頃に私を野良犬から助けてくれた近所のおじいちゃんのことを話しました。
そしたら祖母も母も「まさかぁ」と笑いました。
なぜなら曾おじいちゃんは私が生まれる前に亡くなっているからです。
すれ違うように、私が生まれる1か月ほど前に亡くなったと聞きました。
だから私は曾おじいちゃんに会ったことがありません。
写真もあまり残っていないらしく、私は曾おじいちゃんを見たのはこのときが初めてでした。
なのにその顔が近所で遊んでくれたおじいちゃんにそっくりだったのです。
他人の空似というやつなのかもしれません。
しかし、父や母の捜索虚しく、私と一緒に遊んでくれていたおじいちゃんは結局見つからず、最後までどこの誰なのか分かりませんでした。
写真のおじいちゃんのにこにこした笑顔は私に優しく接してくれていたあのおじいちゃんの笑顔ととても似ていて、私は懐かしくてあったかい気持ちになったのです。
私の曾おじいちゃんは生前子供が大好きで、ひ孫の顔が見れないことだけが心残りだったらしいです。
亡くなった後、私の顔を見たくてこの世に留まり、私を守護して危険から守ってくれていたのかもしれません。
母も祖母も曾おじいちゃんは生前いつもニコニコして優しかったと言います。
ただ人嫌いではなかったし、むしろ人が好きで、顔を歪ませる癖なんてものはなかったようです。
そんな夢物語みたいなことはないかもしれないけど、私はあのおじいちゃんが曾おじいちゃんだったらいいなと思います。そう、信じたいです。
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